私の箱子 (ちくま文庫)

著者 :
  • 筑摩書房 (2020年8月11日発売)
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本棚登録 : 52
感想 : 3

台湾に生まれ、台湾と日本の両地で成長した筆者が見つけた箱に詰まった両親の思い出。日本人として統治時代の台湾で育った父と母との出会いからその死を手紙と日記で追う前半は共感を呼ぶ家族クロニクルといった趣だが、筆者が台湾五大名家の跡取だった父の後継として台湾に向かう後半で視点がぐっと広がり、近現代台湾史の中にある顔家の歴史に迫っていく。
一青姉妹の父親が基隆の名家の出身であることは知っていたが、日本統治時代から光復直後の2・28事件とそれに伴う白色テロが父親とその一族にも色濃く影を落としているなど、台湾史を知る上で欠かせない存在であることがわかり興味深く読める。同時に、筆者の妹が歌う「大家」や「パパママ」の歌詞の意味や想いもこの本に込められたものと同じであり、読んだ後に曲を聴くと、それがより強く伝わって聞こえてきた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 中華趣味の本
感想投稿日 : 2020年9月10日
読了日 : 2020年9月10日
本棚登録日 : 2020年9月6日

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