ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学

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  • 日経BP (2015年11月20日発売)
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▼総評
一章が割と短く、さくさく読める。
経営学の割と先端の(なお5年前に出版された本なので恐らく当時は本当に最先端の)研究をビジネスパーソン向けにひと通りいいとこ取りしているというのは、多分本当なんだろう。

▼特に興味深かったポイント
・弱い繋がりで遠くまで繋がってる方が、クリエイティブになれる。
ある程度の強さがない人間関係なんて意味がない、つまり関係性が無いも同然なんだと思いきや。弱い繋がりだからと遠慮せず、むしろダメ元でどんどん活用してしまえばいいんだね。名刺は召喚カードという考え方と似てる。
矢野和男著「データの見えざる手」を思い出します。

・トランザクティブ・メモリー
「誰が何を知っているか」を知っていること。大事だよね。

・近代経営学は、企業経営の一側面に焦点を定めて分析する。一方で、現実の経営は、複数からなるこれらの「部分」たちを足し合わせ、すり合わせて、最終的に「一つだけの意思決定」をしなければならない。そして、このようなプロセスにおいて、現在の経営学は決定的な理論をまだ持っていない。(P306-308要約)
これだな。経営学がどうも不毛な結果論でしか無いという印象しか持てないのは。

・知識はインフォーマルなものこそ重要
シリコンバレーにIT企業が集積するのも、実際そこでしか得られないインフォーマルな知、暗黙知などを求めるから。
それにしても、中華系にしろユダヤ系にしろネットワークの強い民族に比べて、日本人という属性がグローバルにおいてメリットになることってほとんど聞かないよなぁ…。

▼もやもやポイント
本書は、基本的に、統計分析に基づく研究を引用することを徹底している。

なんというか….経営学や社会学などは統計分析を盲信し過ぎているきらいがあるように思う。身も蓋もない言い方をすれば、ランダムな対照実験などで検証されることのない理論など、どんなに尤もらしく捏ねくり回したところで、ただの結果論である。現実世界での再現性は保証されないし、それを指摘しようものならさらに色々な言い訳を捏ねくり回される。
経営学の世界では、「そうそう実験なんて出来ないから、「ありもののデータを分析する」のが研究」というのが当然なのかもしれないけど…。それを良しとしない経営学者が書いた本があれば、是非読んでみたい。
(少なくとも著者は、その点について何の疑問も抱いていないようだった。)
(なお、組織論の領域に限っては、比較的進んでいるように見える。)
(先日読んだ、リチャード・E・ニスベット著「世界で最も美しい問題解決法」の影響を多分に受けております…。)

特に、本書にはメタ・アナリシスによる分析に基づいた研究も多く引用されるが、それらなんかは特に、結論だけ引き合いに出されたところで、素人目にはとても疑わしく映る。
さすがに、「平均の平均」のようなことではないだろうとは思うものの、メタ・アナリシスとやらで導かれた結論にどれだけの信憑性があるのか、正直理解出来ない。(そんなこと言うならメタ・アナリシスをちゃんと勉強しなさいということですね、はい…。)

でもまあ、真理に近づくという目的に真摯に向き合っている方々が、十分有用な道具であると考えているならば、そういうものなのかなぁ…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 30代
感想投稿日 : 2020年12月25日
読了日 : 2020年12月25日
本棚登録日 : 2020年12月14日

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