中編「鏖戦」「凍月」の二作収録。
どちらも共通しているのは独特な世界観で造語が説明無く飛び交うところ。
「鏖戦」
はるか未来、人類が異星人と戦っているようだけど人類は人体改造してるし文化も戦争に特化した物になっているようでまるで異星人同士の戦争のよう。
でも異星人の方が更に訳分からない価値観だからまだ人類の方が感情移入できるな、という感じで。
その表現が古語というか当て字や文体などで行われている所が面白い。あと途中からある事情(だと思ったけど読み違い?)で文体が変わって行くのも面白かったです。
大変難解でしたが、その奥にある幻想的な風景が良かったです。
「凍月」
未来の月に住む科学者がある経緯で四百数十人分の冷凍頭部を手に入れる事から始まる物語。
こちらは月に入植した家族が世代を経るうちに大型化し、「家系」と呼ばれるまとまり同士で軽い政治闘争が起きている中、新興宗教を母体とした集団が権力を持ち始め、その集団が主人公たち所属「家系」にちょっかい出してきたけど何で?というのが軸になってます。
こちらはミステリー的な要素もあれば政治に関わる人の哲学と成長と変容をも描いていて、硬軟取り混ぜて描ける人なのだなと感服しました。
どちらもP.K.ディック作品の様な題材なのに人が違うとこういった味付けになるんや…みたいな感じです。そういう風味が好きな方にお勧めします。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年10月4日
- 読了日 : 2023年9月30日
- 本棚登録日 : 2023年9月30日
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