書名は「行動経済学『入門』」であるが、細かな理論の説明はなく、伝統的な(ミクロ)経済学と何が違うかについて、平易に解説されている。しかしながら、学部レベルのミクロ経済学、マクロ経済学、情報の経済学(ゲーム理論)の講義を聞いたこともないような人が、本書をスムーズに読み終えるのは、少し難しいと思う。最低限、日経文庫等に一通り目を通してから読むと、理解が尚深まると思われます。
伝統的なミクロ経済学は、経済モデルの(数学的)取り扱いやすさを担保するためか、個人・企業の超合理性を前提としているが、必要な情報を得るのには、一定のコストがかかるのは必定であるし、判断する個人・企業の判断プロセスが、必ずしも完全無比というわけでもない。むしろ、現実はこうだ。個人・企業のリスクを回避しようとするあまり、リスクを過大評価するような傾向が、実験的に明らかになっている。ノイズ・トレーダーと称される非合理的な市場参加者がバブルを引き起こすこともある。ある時点において、一定額の貯蓄をするのがファイナンス的に最も合理的であっても、衝動的な買物をしたり、浪費したりするのは、人間の性である。本書の最後では、こうした現実や知見を、従来の経済学に取り組んでいくかが課題であると、締めくくられている。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
経済学
- 感想投稿日 : 2012年5月8日
- 読了日 : 2012年5月8日
- 本棚登録日 : 2012年5月8日
みんなの感想をみる