リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください--井上達夫の法哲学入門
- 毎日新聞出版 (2015年6月16日発売)
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あとがきで「本書は、『平易な哲学書』をめざしている」と述べているとおり、細かい事項に深入りすることなく、平易な語り口調で、井上の思想の全体を概括している。第一部では主に日本の戦後リベラルの展開を批判的に論じ、第二部では正義の諸構想についての学説を紹介しながら正義概念に関する自身の理論を敷衍する。タイトルに違わず、リベラルの腐敗からリベラリズムを救い出す、という意識が本書全体に通底している。完成された理論ではなく井上の思考の道筋を辿っていく感覚はかなり面白い。砕けた言葉遣いの端々に、思想的に自殺したリベラルに対する「怒りの法哲学者」の憤懣が滲んでいた。しかし、井上の難解な専門書に慣れている読者にとっては満足できない企画かもしれない。テーマが右往左往して読みにくく、また井上自身の理論よりも分野全体を概観することに重きが置かれているため、彼の思想を批判的に検討するには他の著書を参照すべきだろう。
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- 感想投稿日 : 2024年3月4日
- 読了日 : 2024年3月4日
- 本棚登録日 : 2024年3月4日
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