智にはたらけば角が立つ: ある人生の記録

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  • 朝日新聞出版 (1999年3月1日発売)
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学生時代に読んだ本で、とても好きな本なのだが、すでに絶版となっているようで再購入したのはネットの古本屋だった。「血にコクリコの、、、」が文庫本になっているのに以降の本はなっていないのだから、よほど人気がないのだろう。

僕は森嶋通夫のような人物が大好きである。彼のようなプリンシプルのある人物、それは白洲次郎もそうなのだけど、がとても好きである。もちろん、森嶋には昭和の人特有の狭量さがあり、彼自身もそれにはとても自覚的なのだけど、それでも学者としてとても尊敬したい人物だ。このくらいになると、狭量さも一種のチャームである。

本書は彼の京大、阪大での紛争とイギリスへの逃避(かな?)のエピソードである。大学内での争いごとと年月を経ての「和解」がきびきびとした文章でまとめられていて美しい。奥さんへの敬意も(テレを入れながら)あちこちにかもしだされていて、それも好感が持てる。

大学の内紛にはいろいろな思いがある。

僕が学生時代、どうしようもない医局があり、そこは専門分野が異なることを理由に新任教授と教室員とが小学生みたいな幼稚なケンカを繰り返していた。僕はあれを見て、大学というのはとにかく幼い場所だなあと感じたものだ。その後、あれは母校特有の珍事ではなく、オムニプレゼントな事象なのだと悟り、「昭和の人たち」がいかに幼稚に愚かになることができるのかを良く理解した。

もちろん、森嶋、白洲を含め、優れた「昭和の人」はたくさんいる。池田清彦先生や内田樹先生、、、僕の数々の恩師も「昭和の人」だから、皆が悪いわけではない。僕は(数々の葛藤の末に)両親も尊敬しているから、かの世代を全否定しているわけでもない。が、それと同時に「こんなに人生経験積んでるくせになんでそんなに学びがないのだ?」と難じたくなるような人たちもこの世代には多い。「今どきの若い奴らは」は1000年以上前からの常套句だが、僕はむしろ、「今どきの年寄りときたら、、、」と苦々しくコメントしたくなることが、週に1度はある。such a jerk,,,というアメリカ時代以来久しく使っていなかったフレーズを思い出してしまうことも、、、、、(今日はそうだったなあ)。

(白洲次郎が活躍した)大戦直後以降、今ほど日本に「プリンシプル」を必要としている時はない。僕らは、こんなに地震の多い小さな島国に50基以上の原発を作り、それを黙認し、僕らの子どもや孫の世代のエネルギー供給に計り知れない禍根を残した世代として、なんとしてでも日本の未来に一本筋を通す必要がある。そんなことを考えながら、本書を再読した。

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感想投稿日 : 2011年5月1日
本棚登録日 : 2011年5月1日

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