いまや、日本のマンガにおいては「読書もの」が一つのジャンルとして成立している。
高野文子『黄色い本』のように読書という営みそのものを深く掘り下げた作品もあれば、〝マンガの形式を借りたブックガイド〟として優れた作品もある。
両者の折衷ヴァージョンとして、玉川重機『草子ブックガイド』や、施川ユウキ『バーナード嬢曰く。』などがある。
かと思えば、片山ユキヲ『花もて語れ』は前代未聞の「朗読マンガ」(朗読の楽しさをテーマにしたマンガ)であるし、「読書もの」のヴァリエーションとして「図書館もの」や「古書店もの」も多い。
百花繚乱の「読書もの」マンガの中にあって、図抜けて個性的な作品が、この『どくヤン!』だ。
なにしろ、ヤンキー・マンガと「読書もの」マンガという、水と油の世界を無理くり融合させた「ヤンキービブリオギャグ漫画」なのだから。
舞台となる「毘武輪凰(ビブリオ)高校」は、底辺ヤンキー校でありながら生徒全員が読書好き。
学校の方針として、読書さえしていればあとは何をしていても許されるため、「どくヤン」(読書好きヤンキー)たちは日がな一日読書をしてスクールライフを過ごす。
とはいえ、やはりヤンキーはヤンキー。
金品の代わりに本をカツアゲする「ブッカツ」、シンナーの代わりに本の匂いでトリップする「本パン(=本アンパン)」などの特殊な習俗が、この学校にはさまざまあるのだった。
しかも、どくヤンたちは「私小説ヤンキー」「時代小説ヤンキー」「SF小説ヤンキー」など、自らが好む本のジャンルによって派閥を形成しており、派閥抗争も絶えない(笑)。
そのような高校に編入してきた「ごく普通のメガネ高校生」を主人公に、どくヤンたちの巻き起こす騒動が毎回描かれる。
荒唐無稽なギャグマンガではあるが、読書好き(とくに小説好き)の琴線に触れるくすぐりが随所にちりばめられ、毎回ニヤニヤしながら楽しめる。
また、「こんなこと、よく思いつくもんだなー」と、作者の〝タガの外れた想像力〟に驚かされるブッ飛んだ展開も多い。
本巻所収の全9話の中では、第8話「闇購買」がとくにスゴイ。仰天アイデアが畳みかけるように連打される。
そして、意外にもというか、ブックガイドとしても役に立つマンガである。
- 感想投稿日 : 2020年1月23日
- 読了日 : 2020年1月23日
- 本棚登録日 : 2020年1月23日
みんなの感想をみる