私自身にはリーダーたる資質が欠落しているし、べつに欲しいとも思わないのだが、仕事の資料として読んだ。
「サーバント・リーダーシップ」とは、1970年代にロバート・K・グリーンリーフが提唱した概念で、「リーダーはフォロワー(部下など)に奉仕する立場である」との考えに立つ「奉仕型リーダーシップ」のこと。本書によれば、「サーバント・リーダーシップの特徴を一言で言うと、『部下が主役』ということ」なのだという。
旧来的な「おれについてこい!」という「命令型リーダーシップ」が「ハード・パワー」だとすれば、「サーバント・リーダーシップ」は「ソフト・パワー」を用いた、フォロワーの自主性を重んじるリーダーシップといえよう。
本書は、その「サーバント・リーダーシップ」の概念に基づいた経営指南書。
著者たちのリーダーシップ観の大きな特長は、「リーダーにはカリスマは必要ない」という考え方にある。「『カリスマ』」がなければ『リーダー』になれないという懸念は、百害あって一利なし」だと、著者は言う。
つまり、「リーダーシップは開発できる」という考え方に立っているのだ。この点は、過日読んだジョセフ・ナイ著『リーダー・パワー』の「リーダーシップは学習可能だ」という主張と一致している。
経営者ならずとも、リーダー論、組織論として示唆に富む本である。メモしておきたいようなフレーズも随所にある。たとえば――。
《優秀なリーダーは、自分が出した提案でも、メンバーに我々が決めたことだと思わせるリーダーである(119ページ)》
《組織は凡人が集まって非凡なことをやるためのものである(120ページ)》
ただ、『リーダー・パワー』という中身の濃いリーダー論を読んだあとなので、本書は割を食って見劣りがする。「単行本にするほどの内容ではなく、小冊子レベルだなあ」と感じてしまった。
それと、本書にかぎったことではないが、この手のビジネス書を読んでいつもウンザリするのは、本文の内容を図で表わした、一見意味ありげでじつは意味のない図の多用。
文章を読めばわかることをなぜわざわざ図にするのか、さっぱりわからない。図があることで文章が理解しやすくなっているわけでもないし、図だけを見て意味がわかるというわけでもない。
要するに、書店でパラパラとページをめくったときに文章ギッシリだと多忙なビジネスマンに敬遠されがちだから、「図も多用してますよ」というアピールとして入れてあるだけなのだと思う。
- 感想投稿日 : 2019年4月3日
- 読了日 : 2009年4月30日
- 本棚登録日 : 2019年4月3日
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