グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道

  • フィルムアート社 (2010年5月25日発売)
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本棚登録 : 182
感想 : 31
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 『僕の小規模な生活』『うちの妻ってどうでしょう?』などの作品で知られるマンガ家による、初の活字本。
 「はじめに」と「おわりに」のみが本人による書き下ろしの文章で、本文は著者へのインタビューをライターが構成したもの。
 ほかに、『SPA!』に連載したDVD評のコラム、雑誌の占いコーナーに添えて連載した4コマ・マンガ(これがすさまじい手抜きで、ある意味スゴイ)などが収められている。

 福満作品の多くは私生活を反映したエッセイ・マンガだから、本書もマンガとテイストは同じである。ただ、マンガほど面白くはない。
 それでも、本人が書いている「はじめに」と「おわりに」は、文章に独特のねじれたユーモアがあって、そこそこ笑える。
 たとえば、「はじめに」はこんな調子。

《僕は何者なのかと申しますと『僕の小規模な生活』というマンガを描いている作者というだけの存在の者でありまして、そして、そのマンガが特に売れているのかと申しますと、別にそれほど顕著に売れているわけでもなく、その、特に売れてるわけでもないマンガに乗っかる形のインタビュー企画本など……いや、やるのはこの出版社の女性の編集者さんの自由なのですが、はたして需要があるのかどうかという疑問が残ります。そんな本を出そうとするのは、いったいどんな出版社なのか?  と見てみると「フィルムアート社」と書いてあり、まったく聞いたことがない出版社だったので、僕は急に肩の荷がおりて、「へっ、チョロイよね」とイイ気になったのでした。》

 このグダグダ感とヘタレ感は、まさしく福満のマンガそのまんまである。

 困ったことに、メインとなる語り下ろしロング・インタビューの部分が、いちばんつまらない。ライターの技量が低いというわけではなく、もともとこの著者は語りが面白いタイプではないのだろう。
 どうせなら、インタビュー構成にしたりせず、本人に最初から最後まで書かせればよかったのだ。

 それでも福満のファンなら、好きな作家のブログを読むような気持ちでそこそこ楽しめると思う。そんなに面白いわけでもないのになんとなく最後まで読んでしまう、「あとひき」な吸引力はある本だ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ(評論など)
感想投稿日 : 2018年11月21日
読了日 : 2010年8月6日
本棚登録日 : 2018年11月21日

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