古泉(こいずみ)智浩の、第一作品集である。
ど田舎の低レベル高校のうだつの上がらぬ連中の青春を描いて、見事な連作短編。これは青春マンガの傑作だ。『アックス』(青林工藝舎)に連載された作品なのに、ひとりよがりではなくちゃんとエンタテインメントになっている点もよい。
ただし、ふつう「青春マンガ」という言葉から連想しがちなカッコイイ要素は、ここには何一つない。吉田秋生や矢沢あいや紡木たくの諸作のような青春マンガとは、まったくベクトルが違うのだ。
ここに描かれた青春群像の、なんとカッコ悪く、ヘタレで、情けないことよ。しかし、それは愛すべきカッコ悪さであり、微笑ましいヘタレ具合なのである。
「寂れた地方都市のフツーの青春って、おおむねこんなもんだよなあ」と、読んでいてしみじみ得心してしまう。輝かしいことなど何も起こらず、童貞をこじらせて悶々とし、それでも自意識だけは過剰な青春。映画やドラマの中のカッコイイ青春より、私はこの作品の青春のほうをずっと近しく感じる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
マンガ/か行の作者
- 感想投稿日 : 2018年11月14日
- 読了日 : 2010年12月9日
- 本棚登録日 : 2018年11月14日
みんなの感想をみる