古谷実の同名マンガの映画化。園監督としては初の原作つき映画だ。
原作はダークな青春マンガの傑作だったが、この映画版もじつに青春映画らしい青春映画に仕上がっている。
園監督には珍しく、エロ要素はほとんどなし(神楽坂恵演ずる、妙に色っぽいホームレスの下着姿がある程度)。意外なほど正攻法の青春映画になっている。
私は原作も好きだが、本作の原作改変はとてもうまくいっていると思う。ラストに希望をもたせた(原作では主人公は最後に死を選ぶ)のも納得できるし、ちまたで賛否両論を呼んだ、東日本大震災の被災地をあえてロケ地に選んだことについても、私は「賛」だ。3・11後に現代を描く映画を撮るのに、大震災のことを抜きにはできないと考えた園子温の姿勢は、表現者としてまっとうだと思う。
全編にささくれだった暴力が満ちた映画だが、暴力と背中合わせに豊かな詩情も横溢。詩人として出発した園子温らしい、まるで詩のような青春映画である。
主演の新人俳優2人がまことに素晴らしい。その存在感で、曲者ぞろいの脇役陣に堂々と拮抗している。
とくにヒロインの二階堂ふみは、「野生化して肉感的になった宮崎あおい」という趣で、すこぶる魅力的だ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本映画
- 感想投稿日 : 2018年10月24日
- 読了日 : 2012年7月24日
- 本棚登録日 : 2018年10月24日
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