THE MODEL(MarkeZine BOOKS) マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス

著者 :
  • 翔泳社 (2019年1月30日発売)
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エンタープライズ向けのソリューション活動において、非常に参考になる考えだった。
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■受注を確実にする8つの質問
1)ネクストステップは何か。次のアポはいつか。確定してない場合は何待ちか?
2)この会社は何をしている会社か。この会社のお客様は誰か。この会社にとっての競合はどこか。
3)意思決定のキーパーソンは誰か。なぜその人と判断しているのか。
4)役職は関係なく、「絶対に進めたい」と思っている人がいるか
5)顧客が今期に発注する理由は何か
6)予算を持っている人は誰か
7)顧客の企業文化は
8)もし、何もしなかったとしたら?


エンタープライズ市場は「予算を作り出す」「コラボレーション」「個別カスタマイズ」「個別トレーニング」「接触頻度を高めて関係深化」「独創性・コンサルテーション」。SMB市場と全然違う。


数字には、「主観が入り得ない数字」と「主観が入る数字」の2種類が存在する。そこは意識する。



THE MODEL マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス
 
■新規リードはいつか頭打ちになる
・そもそもB2Bの検討型・工学商材では、リード各段階で具体的に検討しているのは全体の10%程度、25%はパートナー、学生、競合など将来的にも購買に至らない層、そして残りの65%は、「将来購買の可能性はあるが、今すぐではない」という人たちだ。裏を返すと、65%のリードは時間がかかっても戻ってくる可能性があるということだ。
・一度商談まで進めても、途中で失注するものもある。受注した後も本来であればアップセル、クロスセルの可能性があるのに、営業のフォローが追いつかずに放置顧客となってしまうこともある。つまり、ビジネスを続ければ続けるほど、このような商談に至らないリード、失注、未フォローの既存顧客の数は増えていく。ここから再び商談化のプロセスへとリサイクル(循環)させる流れを作り、再度見込み客にできれば、劇的な効果が見込める。
・大切なのは「失注と未商談リード」はこれ以上リード獲得コストがかからないということ。つまり、大幅にマーケティングコストを圧縮できる可能性がある。このような課題に対するソリューションとして登場したのが、マーケティングオートメーションだ。
 
■顧客とのエンゲージメントが重要な時代に
・ワンダーマンの調査によると、アメリカの消費者の79%は「購入検討前でも、企業は『あなたを理解し、気にかけていますよ』ということを積極的に示すべきだ」と考えている。
・顧客の6割以上は「購買の意思決定において、価格以上に顧客体験が重要であると考えている」という調査データもある。だからこそ、メッセージやコンテンツが顧客の関心にマッチしていること、顧客にとって最適なチャネルとタイミングで届けることが求められる。
・2015年のフォレスターのレポートによると、B2Bバイヤーの75%は営業担当者から買うよりも、ウェブサイトで買う方が便利だと考えている。
・つまり、顧客は購買のプロセスを、自分が決めたタイミングで、自分が信じられる有益な情報を好みの方法で入手し、営業担当者に売り込まれることなく自分のペースで進めたい。そして、自分のことを理解してくれる企業から購入したいと考えている。優れた顧客体験は、価格や商品そのものよりも重要な意思決定の基準になっているのだ。
 
■データ分析から顧客の行動を理解する
・顧客接点がデジタルにシフトしていくことによって多くのデータが蓄積し、オンラインの行動データを分析することによって顧客の行動や嗜好を読み解くことが可能になった。そして、マーケターはテクノロジーを駆使して、顧客を理解し、マーケティングのプランを立案し、顧客との中長期的な関係を構築するようになっていく。
・SFAだけを使っている場合、使命、住所、電話番号といった属性情報、営業が入力する商談情報、オフラインの顧客活動履歴しか管理できなかった。部門や役職などの属性情報は変更されることもあるし、活動情報は人が入力するため、どうしても抜けや漏れや主観が入ってしまう。これではその顧客のことを知るためには十分な情報とは言えない。
・一方、マーケティングオートメーションを活用すれば、オンラインの行動をトラッキング可能となり、ウェブサイトの訪問履歴、クリックの情報、動画の視聴履歴、メールの開封・クリック・モバイルアプリの閲覧情報など様々な行動データを取得することができる。顧客のデジタルシフトが進めば進むほど、集まるデータが増加し、より精度の高い顧客プロファイル分析が可能となる。流入したリードを素早くフォローするだけのやり方から、一人ひとりの顧客とのエンゲージメントを高め、営業が接点を持つ前に顧客に選ばれる存在に進化するために、マーケティングオートメーションは欠かせない武器なのだ。
 
■パズルを解く1本の線「リサイクル」
・リードから商談になる過程で「今は商談には繋がらない」と判断され、商談にならなかったリード。商談として進めたが失注したロスト商談。顧客になったがフォローが漏れているためにアップセルの機会を失っている既存顧客。これらを再度検討プロセスに戻す、つまり「リサイクル」することによって新規獲得では追いつかない、必要なリード数を補うことが可能になる。
・しかもこのリサイクル対象の箱に溜まっていくリードは、事業年数が経てば経つほど加速度的に増えていく。このたった1本の新しい線を意識するかしないかで、まるでビジネスの組み立て方が変わってくるのだ。
 
■分業から共業へ
●協力せざるを得ない目標を与えよ
・必要なのは「通常と逆の流れ」をつくること。カスタマーサクセスは顧客と接する中で、何に困ることが多いのかを研究し、製品開発やマーケティングメッセージに反映させる。あるいは、営業が提案活動の中で期待値の設定を誤っていないか、顧客満足を高めるためにはどのようなリソースやプログラムが必要かといった情報をフィードバックする。
・営業はインサイドセールスに対して、実際に訪問した時の内容をフィードバックし、インサイドセールスの商談作成時のコメントと乖離があればフィードバックする。
・インサイドセールスは実際にリードと会話して、顧客がコンテンツやイベントに対してどのような感想を持っているか、どのようなキャンペーンを実施すると効果的かなどをユーザーの生の声としてマーケティングにフィードバックする。
・こうした双方向の流れが実現した時に、売上向上という共通目標に対して共同作業をする感覚が芽生えてくるだろう。
 
●チーフ・レベニュー・オフィサー(CRO)がリードする時代
・そしてこれらの組織を率いるには、強力なリーダーシップが必要だ。この数年、アメリカで増えつつある「チーフ・レベニュー・オフィサー(CRO)」という役職はその解決策になるかもしれない。
・これは、会社全体の売上に責任を持つ立場であり、マーケティング、営業、インサイドセールス、コンサルティング、カスタマーサクセスなど、売上を生み出すプロセスに関わる全ての部門を率いる役割だ。
・大切なのは顧客のライフサイクル全体を俯瞰して、関連部門をどのように機能させるかだ。人を採用してカバーするのか、テクノロジーの力で自動化するのかなど、常にチューニングしながら全体最適を図る役割が必要となる。売上(レベニュー)を生み出すモデルを創造し、実践するリーダーがCROという存在である。
 
■レベニューモデルの創造
●実戦で通用するモデルとは
・実践で使える「レベニューモデル」の導入について説明。実践で通用するというからには概念だけでもダメ、プロセスだけでも不十分だ。プロセスを動かすのは、最終的には人間。いくら科学的なプロセスを導入しても、そこに介在するのが人である限り、ヒューマニティを無視しては絶対に機能しない。
 
●最新の「レベニューモデル」
・まず、ターゲット市場に対して「認知拡大」するところから始まる。マーケティングの入り口は必ずしもウェブサイトだけではない。フォーム入力や名刺の獲得などを通じてコンタクト情報を取得すると、「リード獲得」のステージに移る。ここから「リード育成」と「育成対象外」のステージに分かれる。せっかくリード獲得できたものは、すべて等しくフォローしなければと考えがちだが、ターゲットから外れるものに関してはパワーを割いてはいけない。情報提供を通じて育成されたリードは、リードスコアリングやインサイドセールスによって、商談に繋がるかどうかのクオリフィケーション(マーケティング・インサイドセールス・営業の各部門で合意した基準による検品作業)が行われ、「有望リード」に絞り込まれる。
・その後、実際に営業が「アポイント・訪問」を実施し、クオリフィケーションが正しいことを確認して「商談」のステージに移る。契約後は「オンボーディング」と呼ばれるサービス提供や活用のフェーズに入る。顧客になってからは、コンサルティング、カスタマーサポート、トレーニング、コミュニティ、カスタマーサクセスなどが一体となって顧客体験を支えていく。
・SaaSの利点は製品・サービスそのものが顧客接点になるという点だ。そのユーザーの活用状況がトラッキングできるため、顧客の解約リスクなどを検知するといったヘルスチェックにも活用できる。そこで満足度が高まった顧客は契約更新や「アップセル・クロスセル」に繋がり、アドボケーターとなるロイヤルカスタマーがその会社のブランディングにつながる評判をクチコミで伝え、それが新しいリードや市場への認知に貢献してくれる。
・そして最も重要なパーツが「リサイクル」だ。「リード育成」から「有望リード」へのクオリフィケーションで落ちてしまったもの、アポイントに至らなかったもの、商談まで進んだが失注したものなどを全て「リサイクル」というステージに格納し、再度検討プロセスに戻してあげる。直線型ではなく、このような循環型のモデルを構築することができれば、ビジネスは雪だるまのように成長していくだろう。
・顧客ステージを設定する上で重要な概念が3つある。それが「チャネル」「施策・コンテンツ」「移行判定基準」である。
・コミュニケーションとは、伝えたいメッセージを「コンテンツ」化し、オンライン・オフラインを問わず様々な「チャネル」を通じて行われる。この過程でデジタルな「チャネル」を通じて顧客のデータを収集し、よりパーソナライズしたコミュニケーションを行う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年7月27日
読了日 : 2019年7月27日
本棚登録日 : 2019年7月27日

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