『漂流教室』3巻。
その前に前巻までで書き忘れた感想。
・ものすごく教訓的であること
『漂流教室』はホラーでバイオレンス描写が多いけれど、根っこの部分はとても教訓的。1972〜4年当時の公害問題から「地球、自然を大切にしよう」というエコロジーなメッセージ。反戦・反核のメッセージ。普段いじめをしている男子が、極限状態の中では弱い子供たちから逆にやり返される。
・楳図先生は絵がとても上手い
アクションシーンなど動きの表現は上手くないと思うけれど、絵そのものはとても上手いと思う。とくに女の子がかわいい。これがのちに効いてくるのだ……。美少女と恐怖の反転。未読だけど『おろち』は……ちょっと違うのか?あらすじだけを読むと筒井さんの『家族八景』と同じカテゴリに入るような。宇多田ヒカルの母・藤圭子さんがモデルだそう。
3巻の内容。
・飢えてる仲田くん再び
・怪虫再び
・ペ◯ト
・ミ◯ラ
・怪虫……なぜか仲田くんと関連しているという無茶苦茶な話。しかし、小さいやつはやはり使徒バリエーション(コンピュータウイルスなど)に見えてしまうし、イマジネーションの心の世界も今の私からはエヴァとの共通性を感じてしまう。あと、楳図先生ってシラミ退治にDDTを振りかけられてた世代じゃないかなと思う。『漂流教室』からは楳図先生の、戦中戦後に感じた嫌なことすべてが投影されているように感じる。
・ペ◯ト……伏字にしてもしょうがない気もするが。今の我々からすれば切実な恐怖だったはず。
・ミ◯ラ……『漂流教室』には話の大きな流れはあるけど、基本的にはSFホラー漫画なので、「読者をいかに怖がらせるか」という表現を次々とぶち込むのみ。
前回のレビューにて「富野由悠季作品との共通性」を書いたけれど、富野作品もオカルトブームにものすごく影響されている。ついでに言えばヤマトも。因みに『漂流教室』の学校の名前は「大和小学校」。
ガンダムも元は「十五少年漂流記」で、戦争という極限状態に少年たちを送り込む話。『漂流教室』は戦争ではないけれど、極限状態に送り込んで次々と恐怖体験をさせるという点ではまったく同じ。大人たちに対して子供たちの柔軟性(ガンダムではそれがニュータイプだった)で切り抜ける。
ほかに、バトルロワイアルもの(デスゲームもの)の要素。『漂流教室』はゲームではないからデスゲームものには分類されないけど、生き残りをかけて争う部分は同じ。
最後に、大友くんは序盤からずっと好戦的な性格なのが面白い。読み返しても各キャラの性格がブレてないのは、登場人物の設定を楳図先生がある程度きちんと作っていたから??主要キャラとそうでないキャラが最初からわかれているわけではないのに、一貫しているから不思議。
- 感想投稿日 : 2022年4月18日
- 読了日 : 2022年4月11日
- 本棚登録日 : 2022年4月11日
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