ALWAYS 三丁目の夕日 通常版 [DVD]

監督 : 山崎貴 
出演 : 吉岡秀隆  堤真一  小雪  堀北真希  三浦友和  もたいまさこ 
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BSで観たら、ピエール瀧の出演シーン全カットバージョンだった。
昨年3月の逮捕直前に1作目放映、直後の2、3作目は放映中止。7月には1は放映されず、2と3のみ。出演シーン全カット放映とかできるのねーと思ったけど、本来の内容を改変してまで放映するのってどうなの?と。

『ALWAYS 三丁目の夕日』、これまでテレビ放映を適当にブツ切り状態で観てたので、ちゃんと通しで観たのは初めて。続編冒頭の例のアレの有名なシーン…のことはまた今度に。

冒頭、東宝スコープのロゴ。1957年〜65年までで、私が観たことある一番古い作品は『地球防衛軍』かな。(『大怪獣バラン』は東宝スコープだけど白黒)

時代は昭和33年(1958年)、東京タワー建設中のお話ということで有名。西岸良平さんの原作漫画も長く続いていて、私は20年ぐらい前に『ビッグコミックオリジナル』でたまーに読んでた。絵が特徴的だしで、面白いんだか面白くないんだかもう忘れちゃったけど。
もうちょい後になってから、西岸さんが細野さんと同級生で、細野さんが漫画家を諦めた…という話を知りました。諦めてなかったらはっぴいえんどやYMOはなかったかもですね笑。

監督は山崎貴さん。映画に詳しい方も私もだいたい似たような感じだと思うけど、映画監督としては評価低いんじゃないかな。VFXスタッフとしては良いけど…映画監督としては駄作も連発してて、昨年のドラクエの件も記憶に新しいところ。
同じく東宝で仕事することが多い、樋口真嗣監督にも近いかもしれない。特撮だけしとけば、VFXだけしとけば…。
山崎貴さんは阿佐ヶ谷美専出身で、この世代って我々にとっては伝説的で、良い才能をけっこう輩出してる。雨宮慶太、桂正和、寺田克也、竹谷隆之、その後輩が山崎監督。

この作品は山崎監督の出世作でもあるけど、そういうわけで全く期待せずに観ました。それで案の定、良くもなく悪くもなく、そんなに心に残らないような作品。
観た後にウィキペディアを読んだら、私の感想と似たようなことばかりが書かれてました。

先日観た『フラガール』同様、昔の東京をCGで再現してるだけなので、そこを描けばノスタルジーに訴えるのは簡単なんです。この頃の暗部はほとんど描かれていない。そうすると「昔はよかった」的な作品にしかならないですね(NHKスペシャルの『東京ブラックホール』を観逃したのが悔やまれる)。『フォレストガンプ』なんかに非常に近い。
ただ、暗さがない作品もまあ必要だよなとも思うので、別に良いんだけど。

先にも書いたように、この後昭和ノスタルジーな作品が作られるきっかけでもあったのかもしれない。『フラガール』とか、あと最近の朝ドラだと『ひよっこ』とか。

この作品、作中で「ユートピア幻想」が出てくる。東宝特撮だと、先日レビューを書いた『宇宙大戦争』が1959年で、翌年公開。
映画は原作の細切れなエピソードを繋げる形式で、見守るように建設中の東京タワーが出てくる。各エピソードを通して描かれてるのは、この「幻想」「夢」「未来への希望」。

クジ引きのような確率で、芥川賞を獲って小説家になりたい吉岡秀隆。かつての本田宗一郎のような鈴木オートの堤真一。集団就職で夢を抱いて上京してきた堀北真希。亡くした家族の夢をみる三浦友和。存在しない指輪をはめる小雪…。
獏みたいなもので、夢食って生きてる人たち。これ実は人間にとって非常に大切なことで、そういうものが多少なりともなければ生きていけないですね。

ちょっとだけ面白かったのは、原作にもあるのかわからないけど、西岸さんの文学に対する考え方。
好き→芥川龍之介、吉行淳之介
嫌い→石原慎太郎、大江健三郎、川端康成
とかなのかな。だとしたら気持ちはわかるし、吉行淳之介を読みたくなる笑。

名前ネタ、鈴木オートの堤真一のフルネームは鈴木則文!読みは「のりぶみ」ではなく「のりふみ」だけど。西岸良平先生が鈴木則文監督を好きなのか!?謎。

吉岡秀隆が序盤けっこうなクズで面白かった。やっぱり満男と純で、この映画のちょい前が『Dr.コトー』なので善人のイメージが強すぎる。最近、山田洋次監督に「あいつは子供の頃から見た目があまり変わらないからなあ」と言われてたのが面白かったけど。

一応ヒロインの小雪、最近は見るたびにガンバレルーヤのよっちゃんを思い出す。

集団就職の堀北真希、この時代に女性なのはまず有り得んよなあと思ってたらやはり原作は男性で、改変してた点だった。

飲み屋の温水&マギーのコンビ、おじさんのリアリティがすごい。『スカーレット』でもマギーさんが飲み屋行くと、「こういうおじさんいるよな」となる。

山崎監督は小津さんの『お早よう』なんかを目指したり参考にしたらしい。でも、言うほど子供目線にはなってなかったと思う。
小津作品だと、『秋日和』の冒頭に建ったばかりの東京タワーが出てきて、紅白のカラーを象徴的に使っているので、見比べてみるのも面白いかもですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ドラマ
感想投稿日 : 2020年1月7日
読了日 : 2020年1月4日
本棚登録日 : 2020年1月4日

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