ぼくのエリ 200歳の少女 [DVD]

監督 : トーマス・アルフレッドソン 
出演 : カーレ・ヘーデブラント  リーナ・レアンデション 
  • アミューズソフトエンタテインメント
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本棚登録 : 1920
感想 : 354
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芸術作品がこんな形で歪められ破壊されたことに怒りを通り越して呆れてしまった。映倫と配給会社の担当者はエリちゃんに食い殺されればいいのに!!
いや、スウェーデン王立工科大学出身のドルフラングレン様に首を折られて死ねばいいのに!!

私は、芸術作品だけは大事にする国であって欲しいなと思っている。『バス男』だの色々あったけど、日本はひどい映画後進国だわ。50年代は映画先進国だったんですけどね。さらにひどいのは、『バス男』は改題されたけど『ぼくのエリ』のオリジナル版はいまだにDVDが出てないこと…。

私は別に全ての作品のモザイクやボカシを取れとは言っていない。でもこれはいわゆる「ポルノか芸術か」論争以前の、なーんにも問題ないものが映ってるとこに修正を加えてるから腹が立つんです。しかもその場面は、この作品の核心部分の一番大切なところなのに。

『200歳の少女』という邦題にも腹立つんですが、スウェーデン映画『ぼくのエリ』。原題は「正しき者を招き入れよ」という意味で、これの元ネタはザ・スミスのモリッシーのソロアルバムの曲名かららしい。
リメイク版の原題はレットミーインで、これはエリちゃんのセリフにもあった「私を受け入れて」とか、あと「入っていいよ」と言われないと部屋になぜか入れないという設定でタイトル回収されている。

良く言えば静謐だけど、基本的に退屈なのと、映画自体はあまり私の好みではなかった。ただ吸血鬼もの、ホラーなのでそのシーンの映画的爆発力は半端ない。
これも良い映画の条件だけど、ジャンルが固定されない方が良いですね。この映画は恋愛&ドラマ&ホラーで、固定されてない。吸血鬼もの自体が性的なメタファーを有してると思うので、恋愛とホラーが元々混ざっているのもあるけど。

この映画は原作者本人が脚本用にリライトしたそうで、そこが良い点だと思う。原作ではエリちゃんが吸血鬼になった理由などがはっきり書かれているそうだけど、映画では色々と省かれていてわかりづらい。だから解釈が様々に広がる。
ただはっきりしているのは(これはもう言っていいと思うけど)この映画もLGBTやマイノリティものであるということ。
『シェイプオブウォーター』や、あと『デッドプール2』なんかにも近い。デップーはパンセクシャルで不死身だしね。『小さな恋のメロディ』的でもあるけど、ラストシーンと雪はスコリモフスキの『早春』に似てる。

時代設定は70年代末から82年の間ぐらい。劇中でブレジネフ書記長とテレビで言っているのと、クラッシュのポスターが貼ってあるので1980年前後。ちなみにトーマスアルフレッドソン監督の次作『裏切りのサーカス』も1973年でブレジネフ時代の話。
エリちゃんはいったいどこから来たのか…私はソ連の衛星国から来たのかなと思う(ブレジネフドクトリン)。ドラキュラのモデルとなったヴラド3世はルーマニア人で、共産圏であった東欧、吸血鬼伝承のあるスラブ系地域と重なる。あるいは、エリちゃんを演じてる子はイラン系でもあるから中東、アフガニスタンあたりからかな…と、色々な妄想が膨らむ。

先日観た『エスター』と『ぼくのエリ』は同時期ぐらいの映画。あとスウェーデンと言えば『ミレニアム ドラゴンタトゥーの女』とも時期が近く、監督のお兄さんはミレニアム2と3の監督なので、この頃スウェーデンホラーブームみたいな感じだったのかな。それと吸血鬼ものといえばトワイライトサーガも同時期なので、こちらもブームだったのかもしれないですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ホラー
感想投稿日 : 2019年3月21日
読了日 : 2019年3月20日
本棚登録日 : 2019年3月20日

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