本書で取り上げられた作品は全冊未読という、教養の浅い自分でも堪能できた文学分析本。なぜなら日本近代文学に限らず、近年までの映画や他のエンタメ作品にも展開できる内容だから。マチズモ中心の評論を読んでもピンと来なかった人に、うってつけの本だ。
特に、歴代ヒロインたちの心情を代弁するかのような著者の表現が秀逸↓
「私だって、べつに死にたくて死んだわけじゃないのよ。持続可能な恋愛が描けない無能な作家と、消えてくれたほうがありがたい自己チューな男と、悲恋好きの読者のおかげで殺されたのよ。私らが死んであげたおかげで、作品はベストセラーになったりロングセラーになったりしたんだからね。ありがたく思いなさいよ!」
若く美しいヒロインたちが、おばさんになることを許さなかった、彼女たちの容姿が衰えることを想定しなかった、共に老け込むことを想像したくなかった、弱腰かつ安易にロマンチズムに逃げ込む文豪たちの首根っこを引っ捕まえて問い詰めるかのような著者の姿勢が、好きだ。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年3月23日
- 読了日 : 2024年3月23日
- 本棚登録日 : 2024年3月23日
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