【2020年・第18回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人 (『このミス』大賞シリーズ)

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  • 宝島社 (2020年1月10日発売)
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紙鑑定士ってどうも本当にはいないようだ。製紙会社や紙問屋などには紙のことに詳しい専門家がいてもよさそうだが。
「紙鑑定士」を「神探偵」と勘違いして、若い女性が彼氏の浮気調査を依頼してくる。まあ何だか冗談みたいだが、成り行きで引き受けてしまうというのも冗談みたいで、大丈夫かと思う。ところが、紙鑑定士の主人公渡部圭は女性がスマホに写したジオラマを調べるため、「伝説のモデラー」と呼ばれる土生井と会うことによって、意外とするすると解決してしまう。実はこれは導入みたいなもので、この女性に紹介されてやってきた女性の失踪した妹を探すというのが、この小説の本編なのだ。第2の事件でも、やはり手掛かりとなるのはジオラマで、主人公は土生井と協力しながら、妹を探していくことになる。スマホの検索やストリートヴューを大いに駆使するが、紙鑑定士の能力の方はほとんど役に立ってないのが面白いところ。それよりも趣味のトランプの技の方が結局は役に立ったかな。
ジオラマからいろいろ読み取り、足も使って探っていくところがなかなかいい。引き込まれる。どうも妹はとんでもない事件に巻き込まれているかもしれないことが分かってくる。
最後の方は急展開で結末へなだれ込むが、これも割と好みの展開だった。次回作は、紙鑑定が事件解決の中心になるものを期待したいが、なかなか大変かな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリー
感想投稿日 : 2020年7月25日
読了日 : 2020年7月25日
本棚登録日 : 2020年7月25日

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