ゆらぎの詩の物語 (はなはなみんみ物語 2)

  • リブリオ出版
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小人族の生き残りを探し、遥かな海へ家族で漕ぎ出した小人たちは、嵐に巻き込まれ、仲間を失い、不思議な島へとたどり着いた。島は時折激しく身を震わせ、小人たちはせっかく家を建てても壊され、船まで失ってしまう。このままでは小人の国を見つけるどころか、生きていくこともままならない。はなはなとみんみたちは、水中小人隊員だったきゆばあさんの夫が最期に残した「ゆらぎの詩」を頼りに、揺れる島の謎を解き明かそうと、水中くぐりの魔法で海へ探検に出た。

 前作で登場した小人の兵器「いかり玉」は、直接手で使用するタイプの武器で、互いに撃ち合い特攻する様子から現実の火薬を想像させた。今回登場する「ゆらぎの柱」は、作り手である小人が滅び、戦争が終わってなお作動し続け、生き残ったいきものたちの生活を脅かし続けていた。さながら地雷ような戦争の負の遺産だ。食糧を得るため、生きるために始まった戦争が、激化するにつれてついには目的を失い、敵を滅ぼすために故郷の大地をも海に沈めてしまう。そんな戦争の恐ろしさ、人間の愚かしさを感じさせる。
 今作では男女の愛もテーマのひとつになっている。妻を失ったたちはこころが壊れ、また、はなはなも初めての愛と喪失を知る。愛が目覚めた瞬間のときめき、自分を助けるために相手が命を落とした悲しみ、その両方が優しく穏やかな文体に乗って率直に読む者の心に響く。
 戦争をしていた小人たちにも、愛はあったはずなのだ。愛する家族を守るため、男たちは戦争に出たのだろう。はなはなとくりなの純粋な愛を見ていると、一体小人たちはどこで間違って戦争になってしまったのだろうと不思議になる。子供の頃に読んだときは気付けなかったが、ひとたび愛する者を傷付けられ、失ってしまえば、誰かを恨み傷付けなければ心が保てなくなってしまうのかとたちを見ていて思う。それゆえに、戦争はまず、始めないことが肝要なのだ。互いの愛する者を失ってしまってからでは、刃を収めるのは容易ではない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年8月20日
読了日 : 2022年8月20日
本棚登録日 : 2022年8月20日

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