貴族のみが大学に通えていた時代には庶民に成功の道は無かったけれど、現代は能力さえあれば誰でも大学に行き良い仕事に就き成功できるようになった。本書は一見すると平等で良い事のように思えるこの"能力主義"の問題点を指摘する。
小難しい文章も多く、その辺は理解しようとせず軽く読み流したけれど全体的には目から鱗の面白さ。
まず成績は親の収入に比例する傾向があるという身も蓋もない不平等な現実。勉強ができたのも努力できたのも生まれた環境によるものが大きいのに、人は運による成功でも、自分の努力によるものだと思い込む習性があり傲慢になる。そしてそれが富裕層と貧困層の断絶を大きくする。これは分かる気がする。
現代のアメリカでは親の経済状態を子供が引き継ぐ率が高いので、貧乏で将来の見込みがない若者がアメリカと中国にいる場合、中国の若者の方が大成功する可能性は高いらしい。アメリカンドリームは今のアメリカでは中々起こせないという残念な話。
じゃあ親の収入に左右されない完全な能力主義社会を仮に実現したらいい社会になるのかというと、成功しなかった者は能力が低い者という決定的な烙印を押されることになり、金の格差ではなく実力の格差を生むだけになるだろうと。その場合も結局、成功する能力を持って生まれるかの運勝負っていう。
収入の高さこそが絶対と考える風潮にも釘を刺していて、需要と供給の関係で高い給料が貰えているだけで、高収入者が教師や清掃員よりも偉いわけではないっていう当たり前で忘れがちな正論も。成功者の傲慢化の話とも繋がっていて、確かにいわゆる成功者が収入でマウント取る姿はネットとかで見る。
- 感想投稿日 : 2023年3月12日
- 読了日 : 2023年3月12日
- 本棚登録日 : 2023年3月4日
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