十牛図入門: 「新しい自分」への道 (幻冬舎新書 よ 2-1)

著者 :
  • 幻冬舎 (2008年3月1日発売)
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十牛図は学部の心理学関係の授業で一度出て来て面白いなと、思った程度で、それ以来詳しく触れる事がなかったのだが、最近、十牛図についてわかりやすく書いていそうな本があったので買ってみた。

正味の宗教家が書いた本なので、仏教用語が結構出てくるのだが、一般向けに書かれた本なのでわかりやすく説明してくれている。

言わずと知れた十牛図だが、心理学で言うアイデンティティの確立とか自己実現とかに関わる内容のようだ。
もしかしたらもっとヌミノース的な要素を強調した自己実現とかの意味合いが強いのかもしれないが、ちょっとそこらへんはよくわからない。というかあまり興味がない。

作者によると、世界中の人間が仏教思想や唯識思想をきちんと理解する事で世界の平和は保たれると言う。

つまり、この本は究極的には仏教思想と世界平和とかを説いているようですな。

対立や紛争をさけ、お互いを理解して平和に生きて行くためには、「すべての「一人一宇宙」を、包み込み、貫いている、共通の「理」を理解し、その理に則して生きて行くこと」だという。
つまり、みんなが唯識思想に基づいて、かつそれに従って生きていきなさいということである。

確かにみんなが同じルールにきちんと従う事ができれば、とうぜん対立はなくなるんだろうけど・・・。

これって一歩間違えれば全体思想につながるんじゃないの?と思うけど、そんな事いったら怒られるかな。

釈迦は数千年前に仏教を打ち立てて素晴らしい思想を確立したのかもしれないけれど、結局、紛争や対立、戦争はなくなっていない。今のダライラマを見ればそれがよくわかりますね。

一部の人は、唯識思想における悟りの境地に至る事ができるのかもしれないけれど、その境地に至れない人の方が多いと思うし、そこに至れない人達は一体どうなるのだろうか?

また、仏教的には「無」であることが一番いい事らしいが、「無」がある事はどうやって証明するんだろうか?「無」が一番いいと言い切れる根拠はなんなんだろうか?

きっと僕の勉強不足なんだろうけど・・・ちょっと腑に落ちない点がいくつかあったな。

だけど、知識として十牛図のことを知っておいても悪くないし、自己実現とかアイデンティティ確立のたとえ(仏教的な意図とは全然違うのかもしれないけど)としては、とてもわかりやすいですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教養本
感想投稿日 : 2008年5月26日
読了日 : 2008年5月26日
本棚登録日 : 2008年5月26日

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