俺の後輩がこんなに可愛いわけがない (5) (電撃コミックス)

  • KADOKAWA/アスキー・メディアワークス (2014年9月27日発売)
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本棚登録 : 134
感想 : 5
4

黒猫視点のスピンオフ第5巻。
絵柄その他の目立つ欠点は解消して、いちいち気になって引っ掛かったりすることなく楽しく読み終えることができました。

御鏡を桐乃が偽彼氏に仕立てるという原作では読んでいてとても後味が悪かったエピソードはばっさり削られて、黒猫が京介に対する思いを桐乃に打ち明けるところから話が始まります。

黒猫は、桐乃が京介に向ける思いを完全に押し殺していることに気付き、理想の世界――親友としての桐乃も、恋人としての京介も、どちらもあきらめなくてすむ世界――の実現のため、大きな芝居(デスティニー・レコード)を打つことを思いつくのでした…というプロットはこの巻の次の6巻にならないとわからないのですが、自分は原作やアニメですでに知っています。そんな目で見ると、今更ながらいろいろなところに伏線が敷かれているのに気付きます。

例えば告白シーン。黒猫からの告白に回答をためらった京介に向かい、お弁当、コスプレ、さらに「先輩が望むのなら……眼鏡だってかけてあげる」の台詞は、本心から告白しているというより、まずは彼氏彼女の関係にならないと芝居が進まない思いが言わせたのでしょう。その後の桐乃との電話での「か…彼氏ができたら何度目の逢瀬で…かっ…身体を許さねばならないのかしら?」もきっと同じです。(京介の「女の子と付き合ったらいつからおっぱい触っていいの?」は本能でしょうけれどw)

ただ、そうは言っても大好きな相手です。「私はあなたのことが好きよ 世界で一番 他の誰よりもずっと 永遠にあなたのことが好きよ きっと来世でも好きになるわ」の台詞、初デートでの舞い上がった様子(もちろん「神猫」の衣装も)、自宅に招いたときの振る舞いなどは芝居ではなく、本心から出たものでしょう。照れながら、震えながら京介との距離を縮めてゆく黒猫はいじらしく、さらにその様子が描かれたイラストが黒猫のかわいさを引き立てています。
例えば「……怒ってないわ ………私も…だから」と京介に話すシーンで髪の毛の一房をもてあそんでいたり、自宅でシャワーを浴びているときに、京介にどう思われるか思い至ったときにその場でしゃがみこんでしまったりと、このあたりの表現には作画の力も大きく貢献していると思います。

ところで、黒猫視点ということで、相変わらず桐乃の出番が少なく、読んでいてマイナス感情を誘発されることがないので助かるのですが、このエピソードでは京介の存在が厄介です。普段は人生相談の相談相手として桐乃や黒猫の抱える問題の解決に当たり、まあ狂言回し的な役割ではあれ、果断に振舞って頼りがいを見せることが多かった彼ですが、このデスティニー・レコード関連のエピソードではにやけつつ黒猫に振り回されるだけではっきり自分の意思を示すことが全くありません。
もっと彼がはっきり行動していたら…その行動が仮に「おっぱいを揉みしだく」といったものであったとしても、不幸になる人はもっと少なかったのではないかと思わざるを得ません。
それが桐乃であっても、彼の優柔不断の犠牲者です。ラノベの主人公の宿命とは言え、戦犯ですね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 俺の妹がこんなに可愛いわけがない
感想投稿日 : 2018年7月31日
読了日 : 2018年7月31日
本棚登録日 : 2016年3月24日

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