哲学入門 (ちくま学芸文庫 ラ 4-1)

  • 筑摩書房 (2005年3月9日発売)
3.78
  • (41)
  • (46)
  • (67)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 1266
感想 : 54
4

1回読んだだけでは理解しえない内容です。否。哲学には「理解する」という完結・完成・完了の状態が到来しないことを知ることができただけでも十分な成果だと思いたいです。図や絵で示される部分がなく、文字情報だけからできるだけの自分の頭に落とし込もうとするには私の頭では限界がありました…。日本語にはしにくい文章を、うまく訳されているとも思いました。その反面、自分の語彙力の貧弱さが明らかになりました…。

でも、せっかく本からすくい上げたラッセル式の解読手法を、できるだけ指のすきまからこぼさないようにするための努力はできましたし、それを通じて世界を知るための視野を広げることはできたのでは?と思いたいです。それをラッセルは「哲学」の存在意義とも認めていますが。個人的には、ラッセルが述べている面識、知識、知覚について、電子情報であるIT社会の正確や、遺伝子情報にまで解体された人間の本質という情報工学や生物学の視点から哲学をとらえなおしてみると面白いかな?なんて頭の中に描きながらも、哲学と生物学と情報工学なんて、どれも自分の得意分野にかぶってないじゃん!って自戒したのでした…。

同じ時間を同じ場所で過ごしていても主観となる立ち位置が異なるのであれば、個々人がとらえる世界は全く違うもの。テーブルを視覚的にとらえることがどうして個々人の間で似たような知覚と理解を生み出しうるのか。それは先天的か、後天的か。そういう違いを意識する一方で、共有している私達の人間の不思議。哲学書の中では平易に書かれ、例えも身近です。面白かったです。哲学の必要性を、この本では珍しく、熱い言葉でもって最終章に記したラッセルの言葉はとても良かったです。この部分だけ立ち読みで済ませるだけも(出版社としてはNGでしょうけど)十分価値ある本だと思います。でも時間をおいて再読が必要であることに変わりはありません。以前、ヤスパースの『哲学入門』を読んだことがありましたが、これを土台にラッセルを読めたことが良かったのかもしれません…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ちくま学芸文庫
感想投稿日 : 2008年4月14日
読了日 : 2008年4月14日
本棚登録日 : 2008年4月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする