もう闇のなかにはいたくない: 自閉症と闘う少年の日記

  • 草思社 (1999年9月1日発売)
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感想 : 1
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1973年ドイツに生まれ、2歳まではすべてが順調に育ったということだ。
しかし幼稚園の初日のたった2時間の間に何かが起こって、迎えに行ってときに泣きわめいていたと言う。
その後、に日に言葉が減り、おかしな振る舞いになっていった。
眼を合わせることをきらい、ほとんどの人を恐れ、近付かれることや触られることを嫌って閉じこもってしまった。触られると痛みが走るという。
その後、何百と床に転がしてあるビー玉を父親がふざけて一つ隠してみたところ、すぐに気付いてイライラしだし、「ビー玉返して!」としゃべったという。
それに元気付けられた両親は色々と試してみたけれど、以後まったく無反応だった。
外見はまさに精神薄弱としか見えない反復の振る舞いだという彼が、ワープロを使うFCという言語セラピーシステムに参加して、詩を書くようになった。
自閉症としての自分が過ごしてきた日々を、日記にして書き綴っている。
今、彼自身は普通の人間に戻って、言語学の研究をしたいと強く思っている。
読むことは小さい子供のときからできていたようで、知識が豊富だったこともワープロで書いた文によって皆を驚かせた。
父の本を積み木のようにもてあそんでいたのが、実は読んでいたのだということがはっきりと証明された。
周りでは言葉を理解できないものと思い込んでいたために、本人に聞かせるべきでない内容の話を、本人の前で話していたようだ。無関心の見掛けとは違って、その無配慮な言動に、本人の心はひどく傷付いていたようだ。
子ども扱いした態度とか言葉使いや失礼な言動や下心のある振る舞いにも、傷付いている。
直接の暴力よりも、一見親切であったり良かれと思った押し付けであったりするやさしさの方が、耐えられない怖さと痛みを与えてしまうらしい。
無意識とか無条件の愛以外は受け付けられないほど、敏感にかぎ分けてしまうところが、かえって災いしているのかもしれない。
自閉症に関する情報だけでなく、人間の深いところにある真理を覗けるところも、この本の大事なファクターだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年3月8日
読了日 : 2012年3月8日
本棚登録日 : 2012年3月8日

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