令和その他のレイワにおける健全な反逆に関する架空六法

著者 :
  • 集英社 (2023年1月26日発売)
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感想 : 121
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もしもこんな法律ができたら何が起こる?を形にしたブラック短編6篇。(帯によると「リーガルSF」なる新境地らしい。)

・イヤミス!と思った編
「動物裁判」
ボノボ=平和的というイメージを覆すオチ。これって完全犯罪じゃない?何でも分かった”つもり”ってのが一番怖いよねーというか、彼女に新しい恋人ができたら、奴はまた手を回して駄目にしてしまいそう。スマホに聞いたらボノボの寿命40年くらいあるらしいので、割と悪質な守護霊というか呪縛霊に憑かれた感が拭えなくてそこもイヤミス。

・切ないなぁと思った編
「健康なまま死んでくれ」。
身も蓋もない本音タイトルと、善意に押されて制定された法律がおかしな運用されちゃう悲哀が切ない。(たぶん法律作る方もわざと抜け穴開けてあるんだろうね)。ギスギスした社内ヒエラルキーも、取り繕うことしか頭にない企業も、終わりの見えない介護生活も、聞いたことある話ばっかで辛い。「そろそろきみも自由になっていいんじゃないか」って台詞の意味が明かされるラストであちゃーと思ったけど、彼に中止する選択肢はないんだろうな、と思えてそれも切ない。

<総評>
虚実織り交ぜて「こんな法律できるかもね??」なレイワ世界を描いた所が面白かった。読まないと意味の分からない装丁も読んだ後だとこれはコレだな、と分かる所が面白い。(ヤマボンなんかまんまじゃんかと心配になるくらい)。
反面、仮想世界の消失とか一番いい酒のオチとか、他所で読んだことのある話だな、と思わせる所がちょいちょいあった。もちろん誰も読んだことのない驚きを見せてくれ!とか大層なことは言わないけど、短編だしエッセンスを薄めて借りてきた感が頭によぎってちょっともったいなかった気もする。この作者は短~中編じゃなくて長編でミチミチに書きたいことを詰め込んだ方が活きるのかもしれない、と思った1作だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年5月21日
読了日 : 2023年5月21日
本棚登録日 : 2023年5月21日

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