養生訓 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1982年10月6日発売)
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貝原益軒 83歳のときの著作。
「人生を楽しむ」という大目的のために、長生き(長寿)する。そのための「養生」という流れ。医者ではなく儒学者の益軒が、古くから伝わる養生の術を「道」にまで高め、次の世代やさらなる子孫へ伝えようと、並々ならぬ意欲で書いたもの。
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ともかく人生は、楽しむべきである。短命では全世界の富を得たところで仕方のないことだ。(略)それゆえに、道にしたがって身体をたもって、長生きするほど大いなる幸せはないであろう。(P30)
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儒者らしく、論語からの引用も多数ある。また、「孝」の意識もつよくあり、こんな記述が総論上にある。
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 ひとの身体は父母を本(もと)とし、天地を初めとしてなったものであって、天地・父母の恵みを受けて生まれ育った身体であるから、それは私自身のもののようであるが、しかし私のみによって存在するものではない。つまり、天地の賜物であり、父母の残して下さった身体であるから、慎んで大切にして天寿をたもつようにこころがけなければならない。
 これが天地・父母に仕える孝の本である。(P29)
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なお、実践的な養生の術については以下のような記述も気になった。

◎内なる欲望と外なる邪気
 養生法の第一は、自分の身体をそこなう物を除去することである。身体をそこなう物とは内から生ずる欲望と外からやってくる邪気とである。
 前者は、飲食の欲、好色の欲、眠りの欲、言語をほしいままにする欲や、喜・怒・憂・思・悲・恐・驚の七情の欲をいう。後者は、風・寒・暑・湿の天の四気をいうのである。

◎心を平静にして徳を養う
 心を平静にし、気をなごやかにし、言葉を少なくして静をたもつことは、徳を養うとともに身体を養うことにもなる。

◎唾液は大切に
 唾液は身体のうるおいである。血液となるものである。
 草木もうるおいがないと枯れる。そのように唾液は大切なものである。唾液は内臓から口中に出てくる。大切にして、吐いてはいけない。なお遠くへ吐いてはさらにわるい。体に力がいるので気がへるからである。

◎五思
 ものを食べるときに考えなければならないことが五つある。それを五思という。一つは、この食は誰から与えられたのかを思わなければならない。(略)
 二つは、この食は農民の苦労によって作り出されたことを思わなければならない。忘却してはならない。(略)
 三つは、自分には才能も備わった徳もなく、さらには正しい行いもなく、君主を助け、人民を治める苦労もないのに、こうしたおいしいものを食べることができるのはひどく幸せであると…(略)
 四つは、世間には自分より貧しいひとが多い。(略)自分は上等なおいしい食事を十分に食べて飢餓の心配はない。これは大きな幸福というべきであろう。
 五つは、(略)いまは白い飯をやわらかく煮て、十分に食べ、しかも吸物があり、惣菜があって朝夕の二回にわたって十分に食べている。そのうえ酒があって心を楽しませ、気血をたすけている。
 朝食や夕食をするたびに、この五思の中の一つでも二つでもよいから、かわるがわる思い起こして忘れてはならない。そうすれば、日々の楽しみもまたその中にあることに気づくであろう。

◎食後の口内を清潔に
 食後には湯茶で口中を数回すすぐのがよい。口の中を清潔にし、歯にはさまったものを取り去ることができる。牙杖(げじょう:つま楊枝)を使うのはよくない。

◎酒は天の美禄
 ほどよく飲めば陽気を助け、血気をやわらげて食物の消化をよくし、心配ごとをとり去り、興を生じてたいそう利益になる。ところが、多く飲むとひとを害する。(略)たとえば水や火は人間をよく助けるが、同時に災いをもたらすようなものである。

◎膝から下の健康法

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年9月27日
読了日 : 2020年9月27日
本棚登録日 : 2020年7月4日

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