〈新装〉増補修訂版 相互扶助論

  • 同時代社 (2017年2月28日発売)
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人類の実際の歴史はホッブズが提示した自然状態の想定とは異なり、相互扶助が行われてきた。相互扶助は人類固有のものではなく、鳥類や齧歯類などの動物も行っている。

権威は軍事上のことから生じたのではなく、争いを避けることから生じた。

近代国家が登場し始める頃、中世の自由都市が争わない中で築いてきた相互扶助が薄れていった。しかしなくなったわけではない(6章の最後らへん)。農村は土地の共有、都市では労働組合や政治団体という形で。

富裕層にも相互扶助はあるが薄まっていると考えてるっぽかった。

「慈善的贈物や、有福者や、労働者や、医者などの一般的幸福のための任意的労働などについては、それが近代生活にどれだけの役目を勤めているかは、誰でもよく知っている。有名になりたいとか、政治的勢力を得たいとか、あるいは何等かの社会的名声を得たいとかいう望みがしばしばこれらの善行の本当の性質を害うことがある。」(297ページ)と述べられており、豊かになると、善行の動機が本来は相互扶助であるのに歪むのかもしれない。

進化や進歩は、利己心に基づく競争(生存競争)だけではなく相互扶助もあり、相互扶助の方が重要であることを強調していた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年8月26日
読了日 : 2023年8月26日
本棚登録日 : 2023年8月26日

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