別冊図書館戦争 (2)

著者 :
  • アスキー・メディアワークス (2008年8月9日発売)
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完結した。私の図書館戦争が。

2006年に本屋で単行本を見つけた時、パラっと見て、軍隊?戦争?なんか馴染まないし入ってこない・・・と思いつつも目立つ場所に置かれていたのでおすすめなんだろうな、いつか読めるかな、と思ったのが最初。
その後気になってパラっとめくるけど読まない、の繰り返し。
でも2008年の春にアニメ化した時は驚いて喜んで、一話目を見たらすごく新鮮で面白くて、堂上教官が思いの外かっこいい。DVDも全部集めるほどはまった。
で、原作も集めだして読んでいたんだけど、別冊はアニメ開始時にはまだ完結していなくて、番外編的な内容みたいだし、何より図書館革命を読んだ余韻がもの凄くて、別冊は一旦取っておこうと決めた。
その後、革命がアニメ映画化したのもあり別冊Ⅰは読んだけど、Ⅱは読み時を失って2023年に突入・・・

初めはこんなに好きなシリーズを読み終えるのが嫌で、後の楽しみに置いておいたんだけど、もし私の環境や価値観がガラッと変わって、『図書館戦争』を読んでいた頃と感覚があまりに乖離した為に物語の大半が面白く読めなくなってしまったら嫌だと思ったので、元号が平成でも正化でもなく令和も5年を過ぎた今、読むことに。

読み始めてすぐ、あぁこれだと思った。この漫画を読む時のような感覚。でも漫画じゃないのにワクワクする。キャラクターが生き生きしている。やっぱり心地良い。


一、「もしもタイムマシンがあったら」
良化隊員側の視点は読みたくなる。いつからこの設定を考えてたんだろう。しかも図書隊側に入り直すなんて新鮮。
でもそうか、良化隊員も全員が好きで入った訳ではないんだよな。組織というのは当然多様な個性を持った人達の集まりなのに、外部からはまるで同じ意見を持った大きな1人のように見える。だからこそ、組織の意向に賛同できなくなれば簡単に抜けられる(次がある)仕組みが必要なんだろうな。


二、「昔の話を聞かせて」
今回はこの話が一番好きだった。堂上夫妻のやり取りが大好き。郁は28歳か。図書館戦争〜別冊Ⅰまでは私の方が年下だったのにな。その間、仕事や内面を着々と成長させていく郁が羨ましい。
堂上と小牧が最初は衝突してたというのが意外だな。確かに全然似てない二人だけど。そしてやり取りを見ていたら修復できないぐらいいがみあってる・・・けど堂上が一枚上手なのか仲直りしちゃうんだ。

私が図書館戦争シリーズで最も印象に残る台詞、「正論は正しい。でも正論を武器にする奴は正しくない」という堂上教官の言葉。
きっかけになった手塚と郁のやり取りを堂上教官が覚えていた。私はことあるごとにこの言葉を思い出す。指摘するのは良いけど言い方はあるし、反論できないように感情をぶつけてストレス発散したいだけなんだよな。思いやりでもなんでもなく、自分の為。だから未熟なんだ。

堂上が図書特殊部隊に入隊後の絵本展の描写、ここが一番好き。やっぱり有川浩(いつの間にかひろになっていた)は戦闘シーンが上手いと思う。というか元々映像を見ているように書くのが上手いので、緊張感のある場面が想像しやすくハラハラできる。私が図書館革命が好きなのも、シリアスシーンが多いから、素早い展開がカッコイイからだと思う。だからもっと戦闘シーンを書いてほしい。臨場感で没頭したい。ずっと読んでいられる。
やっぱり私は、稲嶺司令がいて、良化隊とドンパチ?やってる時代が好きなんだな。自分の過去もうっすら思い出されて、なんだかエモい。
とてもドラマチックに終わった『革命』後も、普通の日常が続いていたなんて信じられない気持ち。平穏で良いことなのに、不思議だしなぜか寂しい。


三、四、五、「背中合わせの二人」
私はこの話が苦手。前半が割と好きだっただけに、後半の殆どがどんよりしたまま読んでいた。どろどろの人間関係も好きではないし、リアリティがあるようでない気がして。

なにより「大人しくて地味で目立たない」が何回も出てくるけど、これと犯罪は関係ないのでただの悪口になってしまっている。大人しそうな顔して、とも書かれている。どんな顔なら良かったの?と思う。
仮に「活発で派手で目立つ」人が犯人だとしたら、それを鬱陶しいとか、免罪符にしているとか、そうは書かないと思う。「大人しいくせに」とは言うけど「活発なくせに」は言わない。それってただの人の好みでは?とずっと引っかかっていた。というか大人しい人にこそ悪く言いやすい、とさえ思う。
大人しいとは相対的な性質や評価であって、本当に好き好んで大人しくしている人なんているんだろうかと思う。美人とか、何に言い換えてもそうだけど。人は気付かぬ内に見かけで判断していることが本当に多い。

そして現実はこんなにわかり易くなく、今回で言えば同僚たちはほぼ全員が柴崎の味方をしてくれているけど、実際は無関心だったり、対立する側の方が得ならそっちに付いたり、なんか気に食わないからで攻撃する人や、そもそもどちら側から見るかで善悪がひっくり返ったり、善悪などなかったり。だから簡単に解決しない。誰かが得すると誰かが損するのだから、それを受け入れられる徳の高い人はそんなに多くないと思う。
強いて言えば好きな人が自分に振り向いた途端に柴崎に優しくなった広瀬のような人が、世の中にはいっぱいいると感じる。柴崎もよく仲良くできるなとも思うけど。

あと寮監は決して柴崎と水島を同室にしてはいけなかったと思う。どう見ても水と油のような存在で、いくら柴崎が取り繕っても我慢してるだけだし、結果的にキレてるし。階級なんか勝手に呼ばせておけばいいと思うけど。
もっと適した人はいたはず。そもそも人事とか、人を采配する立場の人の責任て重いなと最近思う。なのにだれも責任取らないなと。
それに柴崎の友人知人、というだけで人づての話を信用するのはどうなのか。自分の目で見ないと、客観的事実は見えない。それに、少しは郁に頼っても良かったんじゃないかとも思う。柴崎ができることは早い内に水島からできる限り距離を取ること、だけだったんじゃないかと思う。
でも柴崎の自己分析は当たっている。歪んでいるから呼び寄せるのかもしれない。ある意味受け入れてくれそうな人を探す嗅覚を持っているんだと思う。人って、誰でも。
他人にカマをかけたり試したり、駆け引きのようなことをしすぎると、愛されたい人には線を引き、歪な人を引き寄せる。

当然、水島達ストーカー側は自分のことしか見えていないし大切じゃないんだろうけど、パワハラセクハラ嫌味妬み嫉み、何でもそうだけど、自分だけを守る人、与えない人、取る人、自分だけが可愛い人は、人から与えられないし不幸になる。おそらく幼少期に問題があるし、自分で気付く機会もなかった。人の気持を一切汲み取れない人の末路が心底哀れだなと思った。

郁が柴咲に、意地さえ張らなかったら幸せになれると言っていて、ちゃんと助言してあげるんだなと思った。既婚と独身の関係って難しくて、既婚からマウント取られたり、独身からやっかまれたりされがちで、同じ立場でないってこんなに脆い関係になってしまうんだなと思う。でももし少しの心の余裕があれば、助言や経験談を受け取った方が自分の得になることも多い。素直ってお得だなと思う。

ストーカー事件はすごく胸糞悪い終わり方だったけど、解決した直後からもうハッピーモードで結婚式まで書かれていて、展開が早すぎて驚いた。
あとがきで、小牧と手塚の乾杯で終わらせるつもりだったと書いていて、私もその方がさっぱりしていて良いと思ったけど、作者の旦那さんの助言で追加したんだね。
正直結婚式のくだりはクールな2人にあんまりそぐわないというか、いらないかもと思ったけど、事件があまりにも鬱展開なので中和は必要かと納得した。(最後がなかったら☆3にするかもしれなかった)
意外と手塚慧の雰囲気が好きかもしれない。兄に噛みつく光はやっぱり弟ぽいなと思った。

柴咲と手塚って、図書館戦争の時点では恋愛関係になるとか考えられていなかったんだなー。考えたら職場恋愛だらけでみんなペアになった。
あとやっぱり玄田は面白い。


いつだったか、アニメの堂上教官役の声優・前野さんが、別冊までアニメ化するまで原作を最後まで読まないと言っていて、私と同じことしてるなと思っていた。
まだ読んでないのかな。いつか、読めるようになって(アニメ化して)欲しいなと強く願う。

20230826

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 作家あ行
感想投稿日 : 2023年8月27日
読了日 : 2023年8月27日
本棚登録日 : 2023年8月27日

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