タイトル通りの本。
過去にダブルスにトラウマのある高校一年生男子が、硬式テニス部でダブルスを組むことによってお互いも周囲も成長しようという熱血体育会系小説。
面白かったし、テニスのルールブックもかくやというくらい詳しくテニスについて語られていたと思う。
わかりやすくは砕いてくれているけれど、テニスをやったことがない身としては想像しながら読むのに相当時間がかかった。笑
まあ、団体競技を語らせるとねー・・・。
(今までの)人生の半分は団体競技をやってきている身としては、曲野くんや進藤くんの言いたいことも、越えられない壁も、わからなくもない。
団体競技の鬼としては・・・。なんだろう、「一人はみんなのために、みんなは一人のために」ちゅうやつとはまた違うんだよな・・・。
作中でもちらっと語られていたけれど、団体競技は足し算ではない。
例えば3の力を持つ人たちが二人プレイするとなると、きちんと団体競技がハマッた場合は3×3になる。
決して、3+3ではない。
これが大前提ちゃうかな、と、思う・・・。
どうでもいいように見えて、例えば一人が
「自分はそんなに上手じゃないし、そこそこできればいいし、1できればいいでしょ」
と、思った場合、恐ろしいことに3×1になってしまう。
さらに
「自分ができてなくても迷惑はかからないし、あなた一人でするほうが気兼ねなくできるでしょ。私はマイナスにならない程度のゼロで」
と、いうタイプやった場合、3×0になる。
そういう感じ・・・。
(わからん)
自分ひとりでは責任が重すぎるから誰かといっしょにやりたい、と、いうような「団体競技ごっこ」の場合は掛け算じゃなくて足し算なので、1やったり0の人も参加できるのもミソ。
だから、足して合わせた数は大した合計になってもいない。
どちらがいいかはわからないけれど、掛け算になると個人の責任が倍からあがるからね、自分のほかにも人がいるから、自分は目立たなくすませたい、なんて思われると一蓮托生になってしまうのです。
そして相手も人間なので、ああでもないこうでもないと言われてやっても楽しくない。
どうせなら相手のいいところを先に探し出して、そこをうまく組み合わせて掛け算をしようと考えるのも当り前のようになっている。
この人はこれができる、これが得意、なら、こうやって組み立てよう、と、いう感じ。
この人はこれができない、こんなふうなやり方しかできない、などと否定的な見方しかできなくなると、掛け算にはならなくなるんだよね・・・。
相手に責任を転嫁するのでもなく、相手を切り捨てるのでもなく、信用して、頼りにする、と、いう関係・・・。
これを築くのが案外難しいのだと思う。
どこがって、信用するというところ。(この本でも、ここを一番浮彫にしていた)
とはいえ、相性というのは必ずあるんやけども。笑
(私が)10代のころから叩き込まれたこの考えと姿勢は、いくつになっても、何をやるときにもとてもとても役に立っている。
個人でどこまでも自分を高められる人ももちろん数多くいてはると思うけれど、掛け算がうまくハマッたときのあの高揚感を、一度も知らないなんてそれはひどく損をしているのではないかとすら思ってしまう・・・。
と、まあ、エラそうに語るけれども、ここ最近の私はややさじを投げつつ団体競技をやっているかもしれない。
学生のころはキャプテンをずっとしていたので、進藤の気負いも他人事でもなかった。
「本当はあなたがキャプテンであることを認めたくなかった」
と、引退間近に言われることや、
「受験のためだけに所属しているのに、あれこれ言われたくない」
と、言われることもしっかり経験済み。
同じようにしんどい目を見て、同じように勝ちにこだわっていると思っている人たちが、まったく違うものを見てたのか・・・、と、
「あっ・・・」
と、ぽっかり「栓が抜けてしまう感じ」も、すごくよくわかる。
わかるだけに、「栓が抜けてしまう感じ」と、いうのは、うまく言うたなと思った。
とにかく成長物語なので、この先進藤と曲野のダブルスがどんどん上達していくんやろうと思う・・・。
果たしてこれは、同じように熱血体育会系をやってきた人間が面白いと思えるのか、逆にまったくこういう世界とは縁のなかった人たちが面白いと思えるのか、どっちなんやろうね。
小説としての感想をいえば(いやいやそこやろ感想文なんやし)、登場人物の名前がめっちゃわかりにくい(笑)。
難しい名前ばっかり出てくるな・・・、と、思ったのは、これまた私がこの本の対象年齢を大幅に逸脱しているせいか。
助詞がちょいちょい省かれている文章も気にならないといえば嘘になるし、多人数の会話では、誰がどれをしゃべっているのかいまいち見失うシーンもあった・・・(そこは私の読解力か)。
特に曲野のキャラがつかみきれないまま終わった感もあるけど(一番わかりやすかったのはソラ先輩)、これは続編が続いているから、徐々にわかりやすくなってくるのかな?
ラストシーンは、著者もめちゃめちゃ悦に入ってくるのか、改行多々の構成になっちゃって、
「これは、まんがか!? それとも、昔のX文庫か」
と、思ったのだけど、そこらへんはノリといきおいで読むべきかな。
曲野と藤村さんはもしかすると今後お付き合いをしちゃうみたいなフラグなのかこれ、と、思っていたら、あっさりアドレスの交換までしていた様子で
「はやっ!」
と、思った。
そして進藤は愛されすぎですよね。
ここまでわかりやすいと全然BLもえはしないけど・・・。なんちゅうか・・・。(;^ω^)
ひつこいようやけど、テニスというスポーツは、すんごい細かく掘り下げてるんちゃうんかなー、と、思った。
(わからんけど・・・)
特に会話上でぽんぽん飛び出す専門用語も
「?」
と、思うけど、なんとなく流れで読んだ(笑)。
テニスは、カウントの入り方からよくわかってないから・・・。そこにデュースやらゲームやらが絡んでくるともう、さっぱりわからん。
また、バレーがテニスを元にしたスポーツと知って、
「へええ!」
とも、思った。
「ボールを床に落とさない」と、いう縛りはテニスより難しくなってるとは思うし、チーム内でボールを三回叩くことができるという、一番難しい縛りが加えられているとはいえ、基本的なルールはテニスよりもわかりやすく改善されてるんちゃうやろうか・・・。わからんけど・・・。
それにしても「ダブルス」の「ス」が複数形のエスでないなら、何やの!?
ここに一番びっくりした。
複数形のエスで「ダブルス」なんやったら、「シングルス」の「ス」は何になるのって、ダブルスが「ス」やからシングル「ス」にしといたほうが語呂がエエんちゃう、程度なのかと思ってたよ・・・(本気)。
続編、読むかどうかは、迷うなー。
面白いんやけども~・・・。
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■雁行陣
雁行陣は、鳥の雁(ガン)が、斜めに編隊を組んで飛ぶ形からそう呼ばれているそうですが、兵法では隊列を斜めにして相手に対峙する陣形を「雁行陣」と呼んでいましたので、直接的にはそちらから名前をつけたかもしれません。
■フィジカル
[形動]
1 物質に関するさま。
2 物理的。物理学的。「フィジカルな力」「フィジカルサイエンス」
3 肉体的。身体的。「フィジカルな関係」「フィジカルトレーニング」
■ゲシュタルト崩壊
知覚における現象のひとつ。 全体性を持ったまとまりのある構造(Gestalt, 形態)から全体性が失われてしまい、個々の構成部分にバラバラに切り離して認識し直されてしまう現象をいう。幾何学図形、文字、顔など、視覚的なものがよく知られているが、聴覚や皮膚感覚においても生じうる。
■肯と答える
(2016.11.2)
- 感想投稿日 : 2017年1月20日
- 読了日 : 2016年11月2日
- 本棚登録日 : 2017年1月20日
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