ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学

制作 : 矢野和男 
  • 草思社 (2015年9月17日発売)
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集団におけるアイデアの流れを計測・可視化し、そこからいかにして集団の生産性を高めるかという本。社会物理学とは、情報やアイデアの流れと人々の行動の関係を定量的に扱う社会科学である。目的はアイデアの流れがどのようにして行動に結びついていくのかを明らかにすることだ。

本書のポイントはアイデアを個人が生み出すものではなく、集団でどのように流れ作用するかに焦点を当てていることである。どんなに優れたアイデアも活用されなければ意味が無い。多くの場合において、アイデアは個人ではなく集団で活用されるものだ。だからこそアイデアがどのように集団の中を流れ、行動変化に繋がるかを分析することに意味がある。そして仕組みがわかれば改善することもできる。

本書が最終的に目指すところは、社会にデジタル神経系が構築され、データによって安全で効率的な社会を作ることである。だが俺含む多くの読者にとって有用なのはもっと狭い範囲、例えば職場におけるチームの生産性を高める方法だろう。本書にはその答えも多く載っている。例えば集団的知性の基礎となるのは「会話の参加者が平等に発言しているか」「参加者の社会的シグナルをどれほど読み取れるが」の2点である。マネージャーは本書を読み、カリスマ的仲介者を目指してほしい。

この研究は現代だからこそ行える内容である。人々の行動や交流を定量的に扱うことは、かつては難しかった。一人の研究者が観察できるのは一度に一人だけ。あるいはアンケート調査に頼る必要があった。しかし現代にはスマホがある。交流の多くはスマホを通じて行われ、人々の位置情報さえも記録し続けることができる。そして得られた大量のデータを分析する道具もある。アイデアの流れというものはそれこそ文明以前から存在していたわけだが、現代になってようやく全容が分かるようになったというわけだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月3日
読了日 : 2021年3月17日
本棚登録日 : 2021年3月17日

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