プラネットガーディアン 1 (ガンガンコミックス)

著者 :
  • スクウェア・エニックス (2002年4月1日発売)
3.28
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本棚登録 : 218
感想 : 10
4

まさかの敵は身内だった、ギスギスからはじまる魔女っ子コメディー。

2001年より行われた『鋼の錬金術師』を目玉とする月刊少年ガンガンの連続新連載の一翼を担い、雑誌の中盤を確かに支えた良作です。
『文学少女・シリーズ(コミカライズ)』や『たそがれのにわ』などの「高坂りと」先生の連載デビュー作でありますが、水彩調の透明感ある絵柄ともうひとつの作風(後述)は当時から完成されています。

当初のストーリーとしてはありふれた魔法少女/魔女っ子もの。
宇宙からやってきた平和の使者「ピロスケ」に脱獄した凶悪宇宙人集団「アルゴル」の送還を願われた主人公「如月古雪」、当時の彼女は地球の平和のためならと悩まずうなづきました。

が!

肝心の敵の襲来まで遅れるに遅れること五年、主人公は中学三年生。受験対策真っただ中に魔女っ子デビューする羽目になってしまったのでした……。

「魔法少女」の歴史も長く、最近となっては邪道・魔道・外道魔法少女の層も厚くなっている頃合。
大学生、主婦、熟年、男性が魔法少女になっているご時世、女子中学生が何を甘えてるの? 

って、好事家からは厳しい意見が飛んできそうなものですが、むしろこの作品、身内の好事家に悩まされることが多いので、その独自性あって今の時代も通じる個性を保っていると言えます。

たとえいくら好きだとしても「あるべき魔女っ子像」を押し付けられては思春期真っただ中な女の子としてはたまらない。
それでも夢に夢みる年頃なら許せたのでしょうが、成績優秀で外面だけはいい兄が魔女っ子マニアのうざったい味方と化しているのはキツいでしょうね。
主人公、普段の姿は野暮ったいメガネっ子でかつあんまり要領のいい方じゃないのか勉強家なのに成績はあんまり振るいませんから。

肝心の力をくれるスポンサー兼マスコット「ピロスケ」もいつの間にかウザキャラと化している中、兄に正論を言われて嫌々ながらに敵と戦う主人公という構図が完成しています。
ナチュラルに仕事が嫌な魔法少女としての姿勢は他作品のダーク系魔法少女とはまた違うけど、なんかリアルに嫌な感触を与えてくれるでしょう。

とはいえ、ほのぼのとした絵と鋭角的なギャグ絵の切り替えが陰湿さを与え過ぎず、からっとブラックさを伝えてくれます。
あと、なんだかんだで真面目に戦ってます。

この巻でも陰ながらに助けてくれた異性の仲間、一方的に主人公に好意を寄せる勘違い系ナルシスト、理想的な魔女っ子とお嬢様のガワを被ってる同性の仲間。
と、微妙に既存作品にもありそうなスタンスの後押しをそれぞれ違った意味で受けつつ、奮い立って普通の魔女っ子に見える戦い方をしてます。
未熟なうちは偶然に助けられて勝利を拾っているのはらしいっちゃらしいですね。

なのですが……、巻が進むにつれて当初の敵の扱いはどんどんぞんざいになっていきます。
同じ魔女っ子仲間同士でのやり合いがメインになっていくのはいいんですが、主人公からしてどんどんやさぐれていき、実は一番ヤバい人なんじゃないか? って指摘されたりします。

ちなみに一巻からしてマスコットへの暴力を躊躇せずに行いますし、一瞬で戻るとはいえ闇墜ちします。
黒さを隠し切れてるようでいて、あからさまに隠せていない辺り、好きです。

話としては粗いところも多いんですが、読んでみないと伝わらない特殊な味があるのがいいのですよ。
和洋中で上品かつ華やかにデザインされた三人の衣装デザインは特に主人公の変身前後のギャップもあって画面を鮮やかに演出しますし、「魔法少女」はいつの時代も隆盛なれど埋没しない個性はオンリーワンと私は信ずるものです。

そのようなわけですので、次は王道を突いて主人公の精神世界に突入したり、魔法少女自体よりそのフォロワーの方がヤバかったりする、そんな二巻のレビューでお会いしましょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: Gag
感想投稿日 : 2019年3月2日
読了日 : 2012年6月17日
本棚登録日 : 2012年6月17日

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