人生を変える大人の読書術

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  • メディアックス (2009年2月25日発売)
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感想 : 12
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本を読むことによって身に着くことが実例、実体験をもとに多く列挙されていて、改めて読書の素晴らしさを説いている。本を読むと一概に言っても様々なアプローチの仕方があり、自分の目的を達成するための研究本から単に興味をもっただけの専門外の本まで同じ読み方ではなく、一字一句まで読まなくともよいといった提言や、嫌いな本こそ読むべきという提言には矛盾した部分があるように感じるが、そのバランスをうまくとることによって筆者は一日一冊ペースの読書を可能にし、そこから本当に多くのことを学びとっている。
この読書への飽くなき欲求を見習い、僕も本からたくさんのことを吸収したいと思わせてくれた。

あとは中川久定さんのくだりが非常に興味深かった。
フランス文学者の中川さんは、いくら日本人がフランス語を勉強し、フランス文学に造詣が深くなっても真にフランス人と同じようなものの考え方、理解、解釈を行うことは不可能であるという考えだった。実際、ディドロの『ダランベールの夢』の例を挙げて、戦後の日本文化的考えと自己の思想の枠内で解釈してしまっていたことを反省し、文化の溝があることを感じていた。
それでは、日本人がフランス文化について研究することには意味がないのかという問いに対し、中川さんは一度肯定したうえで持論を展開した。
自分はフランス人ではないからこそ、自分で何度も原文を読んでいたにも関わらず、誤って誤訳されたものを信じてしまった。しかし、そこで、ではフランス人が当然のことと考えているフランス文化はどうなのかと疑問を呈した。彼ら自身も、彼らの文化によって歪んでいないのかと。むしろ、非フランス文化圏の中にいるほうが彼らを客観的に見ることができるのではないのかと。
フランス人にとっては常識であるのにそれを理解できない非フランス文化圏の人がいる。それと同時に、非フランス文化圏の人には常識であるが、フランス文化圏の人には非常識なことも多々ある。
それは単にフランス文化圏の人が気づいていないからである。だからこそ非フランス文化圏の日本人などがフランス文化について研究し、自覚できないフランス的歪みを指摘する意味はあるのだと結論付ける。

なるほど的を得ているなと思った。こうした自己肯定の前向きな考え方はすごく好きだし、スゴク納得できる話だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 勉強法
感想投稿日 : 2011年2月16日
読了日 : 2011年2月16日
本棚登録日 : 2011年2月16日

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