辛亥革命で大きな役割を果たし、現在も、中華民国(台湾)では「国父」として、中華人民共和国では「革命の先行者」として尊敬されている孫文の評伝。「民主」と「独裁」という相矛盾するかにみえる2つの道を追究した「ヤヌスのごとき革命家」としての孫文の生涯を描いている。
孫文については、「辛亥革命」の立役者だが、いつの間にかどこかに行ってしまったというくらいのイメージしか持っていなかったが、壮大な理想主義者でありながら、目的のためなら手段を選ばないマキャベリストの面があったり、何度も蜂起に失敗して長い漂白の時代を過ごしていたりと、本書によりその人物像がくっきりと見えてきた。正直、だいぶイメージが変わったと言ってよい。これまで「人々に慕われる仁徳者」のようなイメージを勝手に抱いていたが、かなり人間臭い人物だったんだな、という印象を持った。日本との関係が思っていたよりも深いことも、知ることができた。
また、下(地方・社会・部分)へ向かう「放」(分散・自由)と、上(中央・国家・全体)へ向かう「収」(集中・統制)という2つの力のせめぎ合いとして孫文を巡る中国近代史を描いているのが、興味深く、また、納得感があった。
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- 感想投稿日 : 2020年2月22日
- 読了日 : 2020年2月18日
- 本棚登録日 : 2020年2月22日
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