宗教の経済思想 (光文社新書)

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  • 光文社 (2006年11月16日発売)
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資本主義とキリスト教の関係を理解するのに参考になればと思い読んだのですが、むしろマックス・ウェーバーが「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で言う、宗教の世俗化が近代資本主義の前提となる職業意識を生み出したというロジックは、既に宗教改革の1500年も前に、世俗の生活を送りながら仏教の修行をすることができるという在家主義の形で、大乗仏教の中に見出すことができるという展開になっています。そして、ベンジャミン・フランクリンと二宮尊徳の労働観の類似性を指摘した上で、両者を決定的に隔てるのは、「忘己利他」の精神に基づく自己犠牲の精神、即ち、自らの身を切ることによって相手を心から共感させて共動するという点にあり、この二宮尊徳の思想は、アマルティア・センの厚生経済学の理論に通じるものがあると言っています。
それから、ひとつ面白かったのは以下の例えです。つまり、各宗教における「救済」とは・・・
・仏教:ローン返済型、即ち、家(悟り、往生)を我が物とするために、一心に住宅ローン返済のために働くサラリーマン
・神道:初めから持ち家であり、ローンを借りたり家賃を払ったりする必要はないが、家を維持するためには努力(祭りなどの神事)が必要
・ユダヤ教、キリスト教、イスラム教:棚からボタモチ型、即ち、神がいずれこの家をあげるから、それまで家賃(信仰、義務)を払いなさいと入居時に約束してくれる
更にこれを細分化すると・・・
1. キリスト教:家賃の支払いと神が家を下さることとは直接関係がない
2. カルヴァン派:神が誰に家をあげるかは予め決まっているがそれは秘密、但し、一生懸命家賃を払っていると何となく分かる
3. イスラム教:神との契約を実行すれば必ず家はもらえる

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感想投稿日 : 2013年8月15日
本棚登録日 : 2013年8月15日

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