不肖・宮嶋inイラク死んでもないのに、カメラを離してしまいま

著者 :
  • アスコム (2003年7月1日発売)
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開戦3日もすれば、100m以遠の空爆に無関心になるほどの頻繁な空爆。
あまりに多すぎて空襲警報すら鳴らなくなるほどで
ホテルに飯も無くなる。
そんな状況、信じられるか。
ただの一度も戦争を経験したことのない自分には、
あまりに非日常に感じられて想像することすら難しい。

写真集とも言うべき大判の本で、写真がたくさん載っている。
テレビでは到底目にすることの出来なかった生々しい写真たち。
さっきまで自分がいた場所が空爆され破壊されたり
一瞬で知人が血の海に浮かぶ肉片に変わる。
あまりの『真実』がそこには映し出されていた。

きちんと写真を撮りたいけれど、三脚に起望遠を使うと
銃座に間違われるかもしれないからやらないという
そんな環境と経験。

市民の略奪や放火。官庁や図書館までが灰と化す。

宮嶋氏が書いておられる通り、当然国民性もあるのだろうが
それにしても自分には想像もつかない状況だ。

当時大手報道は軒並み社命に従い避難した。
安全圏から、アメリカが操作して流す情報だけど報道として流した。
その上現地に残っていた彼らフリーのカメラマンやジャーナリストたちを
「自己責任」などと非難した。
報道人として間違っているのは果たしてどちらなのだろう。

そんな「『報道』をするな」という社命を守るくらいなら
会社を辞めてバグダッドへ行く
ぐらいの気合の入ったやつはいないのか、という宮嶋氏の発言は尤もと思ったし
実際に信濃毎日の記者が辞表を書いた上で入ったというのは
この本で初めて知り、驚いた。
しかしそれが本来の『報道』というものなのではないだろうか。

カメラマンは現場で写真を残してこそ
この言葉は深く響いた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ジャーナリズム・ノンフィクション
感想投稿日 : 2010年1月1日
読了日 : 2008年11月5日
本棚登録日 : 2008年11月5日

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