ジプシー 歴史・社会・文化 (平凡社新書 327)

著者 :
  • 平凡社 (2006年6月10日発売)
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感想 : 13
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「ジプシー」というのは差別用語であるので、「ロマ(ロマニ)」と呼び替えるのが望ましい。

・・・というような話を目にするようになったんだけど、自分の中には差別的なニュアンスはみじんもない。はてどういうことなんだろうと思ってこういう本を読んでみた。

実は「ジプシー」という民族上・文化上の一貫した存在があるわけではなくて、いや一部にはあるらしいが、その来歴や構成は杳としてつまびらかではない。それと目される人々は世界各地に散らばっていて、呼び名も違えば言葉も違う。自己意識や文化習慣ももちろん違う。社会の「資本化」や格差の拡大などによって、流動化した結果そういう境涯に至る人々も少なくないようだ。

どうも、ジプシーとはある民族のことではなく、社会的イメージの存在であるらしい。乱暴に言わせてもらえるなら、結局「人類の差別意識の吹きだまり」なんじゃないのか・・・と思った。

一方で、オレも含めて日本人の多くは、「ジプシー」と言われた場合にある一定の(共通の)イメージを抱くのではないだろうか。あまり西欧的ではない風貌、流浪の民である、歌舞や楽器が上手い、etc。これらは、近世のずさんな「科学的研究」の影響が大きいようだが、そういう画一的なイメージに押し込みたがる「人類の悪い性癖」のせいもあるのかも知れない。

たまたま先日読んだ岩城宏之氏(指揮者)の本にもジプシーに関するくだりがあって、「ジプシー音楽」とか「ツィゴイネルワイゼン」(ツィゴイネルはドイツ語でジプシーの意)という言葉が持っている意味とかイメージがあるので、音楽に関しては「ロマ(ロマニ)」と言い替えなくてもいいんじゃないか、という趣旨だったけど、被差別側の心情を考えるといささかのんきな主張のようにも思える。

著者は最後に、日本の「サンカ」との類似性を指摘するが、その実態のわからなさもあって、一筋縄ではいかない問題のようである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会
感想投稿日 : 2019年6月20日
読了日 : 2014年8月14日
本棚登録日 : 2014年8月14日

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