ニセアカシアの生態学: 外来樹の歴史・利用・生態とその管理

制作 : 崎尾均 
  • 文一総合出版 (2009年4月1日発売)
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ニセアカシアすげー!ってなる本。

ニセアカシアの研究者や地方自治体など行政関係者らによる論文集で、刊行時点でのニセアカシアをめぐる功罪が多面的に記されている。

ニセアカシアは、林業方面ではあまり好かれていない。荒れ地などに浸入していち早く大きくなり、他の樹種の成長を妨げる。アレロパシー(他感作用)と言って、他の成長を妨げる成分を分泌しているともいう。従って単相の林を作りやすく、多様性が損なわれる。旺盛な繁殖力があり(根萌芽など)、「駆除」しても切りがない。

養蜂業者には大変好かれている。ニセアカシアの花はもっさもっさと咲き、花蜜も良質だという。甘いし、多糖類の割合が高くてミツバチにとっても歩留まりがよく、仕上がりの蜂蜜も、結晶化が少なく色が薄いなど上質。花期が短いことを除けば、言うことないくらい。

治水の方面からも、好かれている。林業の理由と裏腹なのだが、たとえば河川の氾濫や山火事などで荒廃した土地でもすぐに育ち、緑を戻すことができる。なにしろ、ニセアカシアの種は(二種類あるそうだが)堅い殻で水を通さず、休眠して、一度キズをつけたり燃やしたりしないと発芽しない仕組みになっているという。賢すぎる。また根菌(窒素固定菌)と共生しており、土地の富栄養化をもたらしやすいという。

基本的には外来種で、在来種の生育に悪影響があり、駆除することが望ましい。でも在来種を完全に駆逐してしまうほどではなく(希少種には問題だろうけど)、20~30年もすれば寿命となり、根が浅いこともあって倒伏するから、放っておいてもいいともいう。

このように、立ち位置によって評価が激しく変わるのがニセアカシアなのだが、なにしろその生命力と生存戦略の高度さには舌を巻く。学術的な本ではあったけど、大変面白かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生物
感想投稿日 : 2019年6月21日
読了日 : 2015年9月2日
本棚登録日 : 2015年9月2日

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