放牧の季節労働者としてたまたま出会った二人の男性が
管理する野営地である夜、一線を越えてしまう。
簡単に言えばゲイ映画。
純粋な愛の作品との評もあるようだが、
更にその上位には、自分という存在の証明が主題にある。気がする。
雄大すぎる大自然は人を開放すると同時に孤独にする。
人はその時、他者との関係性の中でしか
自分を形作ることはできないと再確認する。
(登山やトレッキングに行くとよく分かる)
他者との関係性で作り出される個という存在。
だから、普通に結婚し、子供をもうけ、暮らしている。
だが、満たされない何か。
それは一線を越えた者のみが感じるカオス。澱み。
倫理、公共、社会という価値基準への不適合、屈折しているという自覚、
子供の頃のトラウマ、それでも渇望を持ち続けてしまう葛藤。
孤独と開放性の象徴としての雄大な大自然、密会。
公共性と倫理の象徴としての都市生活、夫婦生活。
舞台の2極構造の中に、彼らの心性をだぶらせる脚本が秀逸。
アコースティックギターのしらべも得も言われぬ情景を演出する。
良作です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ドラマ
- 感想投稿日 : 2012年10月6日
- 読了日 : 2012年10月6日
- 本棚登録日 : 2012年10月6日
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