ロシアを舞台に、あることがきっかけで楽団の指揮者を外された主人公が、
正規楽団に依頼のあったパリ公演を内緒で横取りする。
旧ソ連時代、思想的理由から音楽を取り上げられた指揮者・奏者達の
30年にわたる"告白"の物語。
人間が思うこと、感じることは誰にも止めることはできないし、
人種や肌の色はどうすることもできない。
まして、演奏のような創作活動は、作中でも指摘されているとおり、
全ての人にとって完全に自発的であり、天才にとっては時に狂気的ですらある。
自発性、狂気性から聴取者を感動と興奮で魅了する音楽活動は
独裁的統治を脅かすには充分であり、それゆえ、いわれなき迫害を受ける。
そういう時代だったと回想する指揮者のタクトは
当時、当局に折られたものをセロテープで留めただけのもの。
重くなりがちなテーマ設定を、ロシア人(スラブ民族?)かつ音楽家特有の
いい加減で楽天的な人柄を示す演出を盛り込むことでカジュアルに仕上げている。
圧巻はラスト20分の演奏シーン。
30年にもわたって抑圧されてきた創造が、始めは手探りながらも、
徐々に解放され、あの時の自発性が蘇り、昂ぶる狂気に触れる演出に
ただただ落涙を止めることができなかった。
素晴らしい作品。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ドラマ
- 感想投稿日 : 2013年11月17日
- 読了日 : 2013年11月17日
- 本棚登録日 : 2013年11月17日
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