ここ10年ほどで広がりを見せている「まちライブラリー」について、その立役者となった著者が、その役割や歴史的経緯、コミュニティのあり方を考察した1冊。
第一に、運営者と利用者の間で、まちライブラリーに向かう動機が一致していないという発見が興味深かった。
運営者が自己愛を追求することが、結果的に利用者の憩いにも繋がるという矛盾。
これは翻って組織がまちライブラリー、ひいては居場所を作ることの限界を示しているとも言える。
自治体や企業などの組織体は、何をするにもKPIや目的、全体最適な思考が優先されてしまい、個人の好きという感情は二の次になってしまいがちである。このような組織で、好きをありのままに表現できる場所を作るのは難しいだろう。
まちライブラリーは、その研究成果を持ってして組織がケアできる限界の範囲を示したという点で面白い。
また第二に、まちライブラリーの魅力はその「始めやすさ」にあると思った。
居場所作りというと、何だか大層なことをしないとできないイメージがあると思う。
しかしまちライブラリーは、自分の好きを表現でき、かつ場所も自宅や公園で開催可能であるため、始めるハードルが低い。
これは居場所探しに悩む多くの人にとって大きな思考の転換を起こすのではないだろうか。
つまり、自分が「居場所に参加する」側ではなく、「居場所を作る」側になれる可能性が開かれたということだ。
いまいち当事者意識が湧きにくい「居場所作り」に関して、このような考え方の転換を示して読者に行動する勇気を与えるという点でも、価値のある書籍だと感じた。
- 感想投稿日 : 2024年4月23日
- 読了日 : 2024年4月21日
- 本棚登録日 : 2024年2月11日
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