銀座名バーテンダー物語 (中公文庫 い 86-1)

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  • 中央公論新社 (1999年2月1日発売)
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日本における本格バーの歩みを、銀座のバー「クール」のオーナー・バーテンダー古川緑郎氏を主人公に展開する、ノンフィクションです。本格バーの始まりと歴史を知るには、好適の一冊でしょう。古川緑郎氏の次の言葉が、「クール」とこの本を語ります。

1916(大正5)年生まれの古川緑郎さんは、午後5時きっかりにバー「クール」の看板に明かりをともし開店する。古川さんがはじめてバーで仕事をはじめたのは1929(昭和4)年のことである。銀座・交旬社ビルの前に<少年ボーイ募集――サンスーシー>という看板が出ていて、父とともにバー「サンスーシー」を訪れ、小柄で清楚なママ西川千代さんに採用された。古川さんは高等小学校の2年生、満13歳になったばかりだった。以来70年にわたり、20世紀も終りに近くなった
近日まで、古川さんはバーで働きつづける。

「店内では、客も主人も従業員も、行儀、作法、道徳を守らねばならない。あの店は良い店だ、と言われるには、店の造作がいいからとか、調度品、高級品が並べられているから等々ではない。いくら高級な調度品を並べたてようと、主人と従業員が一丸となって、店のため、ひとつの目的のために務めなければ良い店にはならない。また客も、その気になって店に協力しなければ良い店にはならない。客が良い店を作るのだ。客がその店の営業目的を知って、エチケット、マナー、モラルを守ってくれれば、店内は良い雰囲気につつまれて楽しい店となり、飲む物も自然とおいしくなる。そうなれば客は、口から口へと伝えてくれて、あの店は良い店だから行ってみなさいとなる。良い客がつけば店にも風格がつき、世間にも宣伝されて、客が集って来る。客は一軒の店だけではなく他の店にも行って、いろいろと比較をするものだ。良い店には必ず共通した何かがある。客はそのような店を行ったり来たりする。一流店と言われるには、それなりの努力をしなければならない」 P239より

読書状況:積読 公開設定:公開
カテゴリ: BAR WINE カクテル
感想投稿日 : 2010年3月31日
本棚登録日 : 2010年3月11日

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