東北の蛸足大学が舞台の理系SF(少し不思議の方)短編集。カタカナ語を排除した独特の文体と遺伝子学の解説に馴染めず暫く積んでいた。遺伝子の「あがり」現象が題材の表題作をはじめ、研究室に集う【はぐれ者】達の日常模様が描かれる。架空の法案【出すか出されるか法】を巡る「不可能もなく裏切りもなく」は悲劇的で味わい深く、コメディタッチの「代書屋ミクラの幸運」は箸休めに最適。主人公と同性の私は「ぼくの手のなかでしずかに」が涙なしに読めない。寂寥感漂うビターテイストの作風ながら、仄かな清涼感をも香る不思議な質感の作品集。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2021年1月20日
- 読了日 : 2021年1月19日
- 本棚登録日 : 2021年1月20日
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