江戸時代の終わりから明治時代にかけて、宮城県仙台市に「芳賀四郎」という名前の、町をぶらぶら歩き回ることが大好きな身体の大きな男がいた。その男は後世にも「仙台四郎」と親しまれ、本物の福の神だったんじゃないかと伝えられている。
この「仙台四郎」さんは、発達障害をもっていたようで、子どものころから、町をぶらぶら歩き回り、着の身着のまま、そこらの店の玄関口を掃いたり、水を撒いたり、子どもに馬鹿にされながらも笑われるのが好きで、踊ったり、一緒になって笑ったりしていた。
そのうち、四郎さんが手伝う店の中には、ほうきで掃いても砂ぼこりが舞うだけだし、店の前で居座られることを怪訝に思い、追い払う店と、好きにやらせてお駄賃やご飯を食べさせてくれる店とが出てくる。
四郎さんは、自分を追い払う店には通うことをやめ、好きにやらせてくれる店に通い、満足するまで自分なりの手伝いをするようになると、不思議と四郎さんの通う店は繁盛し、追い払った店は逆の結果となっていく。
他にも四郎さんの通う団子屋も「四郎が通う店だから美味しいにきまってる!」という噂から行列ができるほど繁盛したことがある。
四郎さんにとっては、自分の好きにやらせてくれる店に通ったり、お世話になった人がいる店の団子を食べに行ったりしてる普通の行動だけだったけど、そういった店の四郎さんが通うことを嫌がらない店主の人柄や、四郎さんとは関係なくもともと美味しかった団子が知られることになり、結果的に四郎さんが通った店を繁盛させることになり、人々は「四郎は福の神だ。」と言うようになる。
諸説はあるものの、そんな四郎さんの一生を描いた一冊。
また、時代は進み、いろんなものが豊かになった現代、障害をもった人や老人が幸せそうに、町を歩き回っていることはあまり目にすることはない。そういった人たちにとって、貧しくはあっても自由だった明治あたりと、施設や設備は整っているけど、規制や法律により守られる今とは、どっちが幸せなのか、考えさせられる一冊でした。
- 感想投稿日 : 2015年4月4日
- 読了日 : 2015年4月4日
- 本棚登録日 : 2015年4月4日
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