蒼天航路(2) (講談社漫画文庫)

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  • 講談社 (2000年12月12日発売)
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5

「とことん三国志」での再読レビュー。

第1期として、黄巾の乱討伐まで、宮城谷昌光版と吉川英治版の「三国志」と「蒼天航路」で読み比べてみる。

この期間では、太平道の発生の真因をどこに描くかで差が出てくる。それは曹操の出自等に影響を与える。

吉川版の曹操が、名門の生まれとして描かれ、曹騰の孫と言う「宦官」との関係が消されているのが大きな特長として浮かび上がる。逆にその点を最も大きく取り扱うのが、宮城谷版で、蒼天航路では曹騰よりも張譲を中心とした十常侍との因縁を描こうとする。


当時の権力の両輪であった宦官と皇帝の外戚。
この構図が明らかに見えるのは宮城谷版だけで、
蒼天航路では、何皇后や何進などがかろうじて
外戚が遠景に見える。

この2者の綱引きが、漢帝国を疲弊させ、
その上に乗った霊帝が官位を販売するという
前代未聞の愚作を重ねたことで、
官僚組織から優秀な人材も消える。

この背景があって、
太平道の普及と宗教革命としての「黄巾の乱」が
立ち上がってくるのだ。

2者の対立を遠因としない蒼天航路では、
宦官を初期の敵役とし、その意味で
「党固の禁」がクローズアップされるのだ。

読み比べて、特別に立ち上がってくる存在が、
下玲朧であろう。世界を巡って来た歌姫として、
世界中の群狼のなかから、董卓と曹操を選び、
そして、その若さをもとに曹操を夫とした女性。

董卓という悪の権化を際立たせるための
うまい登場のさせかたである。


こちらは、mixiレビューからの転載。

蒼天航路 (2) 過去レビュー

この巻は、少年期が終わり北部熨時代から黄巾党の乱まで。
曹操は、漢朝にあって、蒼天の死を感じつつも
「蒼天にいまだ我が道は見えず」まだ迷いの時期。

関羽で黄巾党頭首張角に神になると予言され
「佞言、断つべし」と一刀両断。

黄巾党討伐の幕での袁紹との会話で、
この作品世界に大きなうねりがやってくる。

「俺の戦いは至弱より始まり、
そしてすべての敵を崩し、やがて至強をも倒すに至る」

「我に天の理があるのを問うのだ」

曹操の挙兵である。
初陣にあたり、この志の高さ、さすが曹操である。

どちらかというと挙兵以来、敗戦続きの我が人生は
劉備玄徳に近い。しかしながら
「わかってるのは、おいらが天下の器であることだ」
という妄想はなかなか持てない。

曹操の曹操たらしめるのは、潁川の食料庫焼き討ち事件。
自軍の将校をも厭わずに断行する作戦運用に
曹操の軍事意識が現れる。

三軍は気を奪うべし
将軍は心を奪うべし
愛民は煩わさるべきなり

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2014年9月20日
読了日 : 2014年9月20日
本棚登録日 : 2014年9月20日

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