この書籍に出会えて本当に良かった。自分の視野がまた広がった。
著者は、政治家や官僚などのエスタブリッッシュメント(支配層)による一体的な支配に対して日本の報道メディアが危機にさらされている現状を分かりやすくかつ危機感をもって解説している。
横の連携がない日本のタコツボ型ジャーナリズムに対して「なぜ会社の垣根を超え、権力と対峙して朝日新聞を擁護しなかったのか。このジャーナリズム精神の欠落こそが、日本の民主主義に大きな危機を招いている現実をメディアの人間は直視しないのだろうか。」「記者クラブメディアの一つの問題点は、記者クラブに所属している記者が取材先のコピーになってしまうことだ。価値観や問題意識のもち方に至るまで、記者が取材先と全部同じになってしまう」などと厳しく叱咤する。一方で政権による国民への説明に対しては、「記者から次々とタフな質問を浴び、完全にアドリブで答えていく。これが民主主義国家のあるべき記者会見のスタイルだ。」と主張する。
「吉田調書」「吉田証言」を巡る朝日新聞の対応を例に、安倍政権が朝日新聞をバッシングするために慰安婦問題を政治利用したことや、メディアが朝日新聞を批判するための論調に固執したことなど、コトの本質を報道できない朝日新聞を含む日本のジャーナリズムの危機を伝えている。
権力を監視するはずのジャーナリズム及び監視手段としての「調査報道」の衰退に対する危機感が伝わる迫真の一冊だ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年1月17日
- 読了日 : 2021年1月17日
- 本棚登録日 : 2021年1月17日
みんなの感想をみる