妙な高揚感を覚えたまま、気付けば最後まで読んでしまった。
手短かにまとめると、44歳の冴えない土木作業員のオヤジが、(本当に冴えない。ああはなりたくないという感じである。)同僚の若手現場監督に嫉妬して空回りしたり、オヤジ狩りの中学生に決闘を挑んだり、ロクな話じゃないような…
しかし、
戦うということに対する人間の恐怖、そしてそれを乗り越えていく様を、これほど身近に感じさせてくれる作品はこれまで読んだことがなく、不思議に引き込まれてしまった。
本作品のように、日常生活で命をかけて他人と戦わなければならない場面はそれほどないだろう。(勿論個人差はあるが。)
しかし、他人と話すうち、相手の言っていることに対して自分の中に違和感を覚え、それに気付きながらも、その人との関係が悪くなることを恐れ、議論せず穏便に済ますことは、ままある。
そして、そういったことを繰り返すうちに、議論することを忘れ、それで安心を得られるかと思いきや、逆に閉塞感に追いつめられていく自分が居るのだ。
確かに今、自分はその過程にある。冴えないオヤジと馬鹿にした黒沢は、自分の未来の姿だ。
しかし同時に、何歳でも遅くはない、それに気付いたら戦え!という作者のメッセージを強く感じた。
なんでもかんでも好戦的に反抗するというわけではない。他人との関わり合いの中で、自分の譲れない部分、自分の心の違和感を冷静に認識し、論理的に主張していく、そんな当たり前とも言えることを、今一度肝に命じたい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
漫画
- 感想投稿日 : 2010年12月18日
- 読了日 : 2010年12月18日
- 本棚登録日 : 2010年12月18日
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