はじめに子どもありき

著者 :
  • 東洋館出版社 (2017年3月29日発売)
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感想 : 15
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 この本は、もともと1994年に出版された本なのだそうだ。30年近く経った今でも決して色褪せることなく、教育とは何か、教師はどのように子どもと接するべきなのか、そうした基本的な、しかも一番大切なことを教えてくれる。既に教壇に立っている人はもちろん、これから教壇に立とうとしている人も、ぜひ側に置いて、いつでも見返せるようにするべき名著である。

 しかし、この本に書いてあることを実践しようとすると、実に困難なことに気付くだろう。基本に忠実なことが、実は何より難しいのだ。まえがきで著者も言っているように、p.3「本書は、こうすればうまくいくというような具体的な方法は書かれていない。」基本を守った上で、自分の目の前の子どもとともに自分で授業を創っていくしかない。厳しいものである。

 第九章では、個別学習の方法が述べられている。今の時代に個別学習というと、すぐに「個別最適な学び」を思い浮かべる人がいるかも知れない。しかし、筆者が言っている個別学習は、ICTを使っていろいろな問題を与える「個別最適な学び」とは、全く別物といっていい。教師が、一人一人の子どもと向き合って初めて実現が可能になる個別学習である。この本で書かれている個別学習を追究する限り、教師の仕事がAIに置き換わることはないと思う。

 この本の中で、昔のLOGOのブームが紹介されていた(p.86)。その昔、アメリカでLOGOがブームになったが、すぐに沈滞してしまったという。それは、大人がLOGOをマスターしてしまったら、急に「教える」ようになったため、子どもがつまらなくなってしまったというのだ。大人も、子どもと一緒にLOGO探索することを楽しんでいれば、あるいは、もう少しブームが続いていたのかもしれない。今のプログラミング教育も同じ末路を辿るのではないかと心配になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 教育
感想投稿日 : 2022年8月28日
読了日 : 2022年8月28日
本棚登録日 : 2022年8月28日

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