日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社+α新書)

著者 :
  • 講談社 (2010年2月19日発売)
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なかなか興味深い内容。農業の補助金漬けをやめるべき、輸出を促進すべきなど、一部の主張には頷くこともできる。ただ、全体としては低評価。その理由は、何よりもまず出典の欠如。一部には記載してあるものの、参考文献リストもないし、こういう状態でだらだらと自説を開陳されても、果たしてほんとうに正しいのかどうか読者には判断ができない。この手の本でまず守らなければならないことを満たせていないという点で、もう高い評価は与えられない。また、そのデータの活用の仕方も、どうも自分の都合が良いようにしすぎているふしがある。たとえば農家の高齢化は問題がないとするくだり、8割が「疑似農家」(=農業を専門的・本格的に取り組んでいない農家)だとしているが、でも残り2割に農業生産の大半を占める大規模農家が含まれるのだとしたら、それは問題だと思うが、なぜかそこはスルー。大規模農家のあいだで高齢化問題があるのかないのか、肝腎なところは書いていないのである。そもそも売上の大半は大規模な農家が占めていようとも、ほかの農家が滅びて良いということはないだろう。この本のなかでは、一事が万事そういったトーンで書かれているが、たとえば経団連の大手企業が輸出額の大半を占めているからといって、そのほかの中小企業からの輸出がなくなってしまっていいかといえば、そんなわけはないはずだ。そう考えると、本書における論の進めかたには問題があると感じる。だいたい、統計上の数字ではなく実態を見ろと主張している箇所があるのに、終盤では他国の数字の伸びを引き合いに日本の農業政策を論じるなど、とにかくいろんなところから自分に都合の良いデータを引っ張ってきているから、姿勢が首尾一貫していないのである。農水省を噓だらけ、国民を騙していると喝破しておきながら、本作の論調も騙しそのもの。参考になる部分はあるので読むなとはいわないが、真に受けておなじ主張を展開するのはやめたほうがよい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年8月25日
読了日 : 2013年8月25日
本棚登録日 : 2013年8月25日

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