ミレニアム2 火と戯れる女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)

  • 早川書房 (2011年11月10日発売)
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感想 : 267
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 こ、これは...。
「『いままで友だちでいてくれてありがとう。』 背筋に冷たいものが走った。こんな返事を望んではいなかった。まるで別れの言葉ではないか。”リスベットはたったひとりで世界を相手に戦おうとしている。”」
 世にハードボイルド小説というのがあるのは知っていた。しかしこれまで知っている気でいたハードボイルドなんてふにゃふにゃの半熟卵でしかなかったのだと思い知った。ここに真のハードボイルドがある。リスベット・サランデル、彼女は徹底的に孤独で、気高く、妥協せず、信念のもと、誰の協力も得ず、たったひとりで自分が悪と見すえたものに敢然と立ち向かう。もちろんこの現実の中ではいかに類いまれな異能をもとうともたったひとりでなしうることなどたかが知れている。彼女の偽りで固められた経歴や他を慮らない言動にだまされない真の人間洞察をもった少数の人間が、矢も盾もたまらず彼女を守り、助けようと動く。これは紛れようもなくそんな人間たちの魂の物語だ。冒頭の局面は上下巻計1000頁におよぶ作品の900頁目あたり。複雑怪奇で見通しが効かなかった事件の失われたピースが次第にはまりだして全貌が明らかになり、物語は最後の結末へ向けて加速度をつけて走り出す。あともう少し、これですべてが解決するのだろうか、いったいどうなるんだ、息をつめて読み進んだ最後に撃ち込まれる一発の銃弾。えーっ!それはないだろう!もう世界は終わりだ。この結末はどうつけてくれるんだ、というところで物語は終わる。いや終わらない。終わらせるものか。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ミステリ
感想投稿日 : 2017年1月22日
読了日 : 2017年1月17日
本棚登録日 : 2017年1月22日

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