パリ警視庁迷宮捜査班 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

  • 早川書房 (2019年5月1日発売)
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感想 : 48
5

「パリ警視庁迷宮捜査班」1作目にして、作者のデビュー作。
落ちこぼれ警官が集められ、迷宮入り事件を捜査することに。
これが面白くて~大歓迎!

アンヌ・カぺスタンは、パリ司法警察の警視正。
30代半ばにして出世しているエリートだったが、犯人を射殺した件が過剰防衛とみなされ、半年間の停職になっていました。
局長のビュロンに呼び出され、特別班のリーダーに任命されます。
ところが、職場は警察署内ですらない古ぼけたアパート、捜査員はまだ停職中だったり何かと問題がある人間の寄せ集め。

有能そうなのは、ルブルトンぐらい?
彼はカぺスタンの処分を担当した堅物で、体格のいいハンサムだが、ゲイであることをカミングアウトしたために部署で浮いたのだった…
警察内のことをモデルに書いた小説がヒットしドラマ化もされた女性ロジェールは、収入があるのでアパートに次々に家具を持ち込み、飼い犬まで連れてくる。
ギャンブル依存症だった若い女性や、スピード狂の若者などまで。

相棒が次々にひどい目に遭ったトレズは疫病神と敬遠され、自らも怯えて人に近づかない。
カぺスタンはそんなトレズを気にせずパートナーにし、変わり者の部下たちの特技を生かして、臨機応変に捜査を進めていく。
左遷される前のカぺスタンが精神的に限界だったことも優しさを垣間見せ、出来ることに手を付けて淡々と進んでいくさまが好もしい。
変わり者たちの奇行っぷりは笑えます。

「特捜部Q」フランス版ともいわれるようで、確かに左遷された刑事にポンコツな部下がつき、意外な活躍をする話で、ユーモアもある。
「特捜部Q」だと部下は警官ですらないのだが…背景が重いものを含み、よく書き込まれています。
内容的には、パリが舞台のこちらの方が軽やかな雰囲気ですが、それはいかにもパリっぽい洒落のめした楽しさがありますね。
謎めいたモチーフの見え隠れする構成で、一見関わりなさそうな事件の重なり具合、迫力ある終盤、切ない幕切れと、面白く読めました。

カぺスタンは刑事を続けられるのかと自問し、上司の思惑も測りかねていたのが、ビュロンはただ厄介者をまとめて放り出したわけではなく、只者じゃないらしい。
そのあたりも~先が楽しみです☆

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ミステリ(ヒロイン)
感想投稿日 : 2021年6月19日
読了日 : 2019年8月26日
本棚登録日 : 2021年6月19日

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