直木賞候補になったというので、読んでみました。
絵草紙屋を中心に、江戸の町で肩寄せあって暮らす人々をいきいきと描いて、読後感の良い小説でした。
風待ち小路は、小さな商店が並ぶ通り。
皆穏やかに暮らしていたが、少し離れたところに新興の商店街が出来て、人気を奪われそうになる。
絵草紙屋「粂屋」の主人・笠兵衛は48歳。当時としては初老だが、人気役者・岩井半四郎に似た男前で、まだまだ元気。
5年前に妻を亡くし、後に妾を持ったが、後添えにするかどうか迷っているうちに‥
息子の瞬次郎がおっとりしていて、やや頼りなく思えるのが悩み。
笠兵衛が趣味的にやっている手製の引き札を頼みに、半襟屋のおちせが訪れた。
瞬次郎はおちせに惹かれ、おちせも遠慮がちに誘いに乗って歌舞伎に行ったりと、付き合っていたが‥?
そのことに気づいた笠兵衛は息子も良い目をしていると喜ぶが、なかなか進展しない仲に気をもむ。
おちせには、身元にある事情があった。
生薬屋の嫁のおたよは、夫の遊び癖が悩み。
商売の力になろうとしたことは裏目に出てしまいそうだが‥?
しだいに商家の女房として存在感を増していく。
洗濯屋の子ども・佑太は、父親が出て行ったのが悩みだった。
母と付き合っている「おじさん」を町中で見かけるが‥?
商店街の人気を取り戻すため、店主の世代と跡継ぎの若旦那らが、それぞれに工夫を凝らす。
素人芝居で歌舞伎をやろうという企画で盛り上がるが‥?
人と関わりあいながら、それぞれの人生が豊かになっていくのが微笑ましい。
中盤は仇討ちという時代劇ならではの苦難が持ち上がり、はらはらしますが、予想以上のハッピーエンドに。
こんな多幸感で終わる時代小説って珍しいのでは。
気分よく読み終われました。
- 感想投稿日 : 2013年3月4日
- 読了日 : 2013年2月2日
- 本棚登録日 : 2013年1月31日
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